短編
□神様探し
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たった今数人のレイブンクロー生を寮に帰したばかりなんだから、もしかしたら他にも誰か居るかもしれないのに
セブルスに追いやられて、壁に背をつく。
住み慣れた、このホグワーツの端っこで、夢にまでみたような光景に…一歩たりとも動けない。
そしてゆっくりと近づく、焦がれていたその唇を受け止める。
セブルス、セブルス…セブルス。
帰ってきてくれたんだ、私のところに。
彼が生きているときも、この想いが届くことはきっとないと思ってたし
彼が死んでしまって尚更、それは永遠に葬り去られてしまったと嘆いた。
なのに、今、彼は
その深い瞳に私だけを映して、私の目の前に、確かに存在している。
月明かりが差し込んで青白い彼を照らすと、まるで、ほんとの、実態をもった彼が其処に居るかの様に見える錯覚。
なんて美しい夜なんだろう。
彼の唇が、鼻や瞼や頬に落ちる度
一滴の雪が降ってきたみたいにひんやりとして
だけど、どうしようもなく私の中に熱を灯す。
もっと、もっと、欲しくなってしまう。
「…君に、触れたくて仕方ないんだ。」
ああ、そんなに
『泣かないで、セブルス。』
私を締めつけないでほしい。
「君が欲しくてたまらない。」
こっちまで泣きそうになるじゃない。
『私も。私もよ』
「愛してるんだナナコ、どうしようもないくらい…私は、どうしたらいい」
『……セブルス、お願いがあるの』
くっついて、耳元で囁きあっていた距離を少し開けると、切なげに眉間の皺を寄せた彼と目が合った。きっと私も、同じような顔で彼の目に映っているに違いない。
『必ず、すぐに会いに行くと誓うわ。だから、それまで待っていてほしいの』
彼の頬を両手で包むと、目尻から水滴が滑り落ちてきて私の手を擦り抜けた。
その涙を拭うこともできないほどの、私たちを隔てる時空間。
私は決意したのだ。
「私と、離れるということか」
『ええ。私が、"そちら"に行くまで。勿論、まだ何十年とかかると思うわ。それまで』
待っていてくれる?
「………わかった。必ず、一番に、私の元へ来ると約束してくれ。」
『誓うわ。』
「…君には見えない姿で、傍にいては駄目か」
『だーめ。私だけ皺くちゃになっていく顔を見せなきゃいけないなんて不公平だもの。』
私が先に、釣られて貴方も微笑んだ。
『知らないなら教えて差し上げるけど、女は愛する人にはいつまでも美しい自分を見てて欲しいものなのよ?』
「ふ、致し方ない、君の望みならば叶えてやらんわけにはいくまい。だが、私はどんな君でも愛している。」
また、頬に雪が一滴。
『セブルス…ありがとう。それから、
貴方だけを愛しているわ。
…永遠に。』
僕らは幸せな二人のままでいられただろうか
セブルスは幸せそうに笑って、月の光に溶けていった。
私はもう、泣かないと決めた。