短編

□バレバレだけど大丈夫?
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love【愛】
@親兄弟のいつくしみ合う心。広く人間や生物への思いやり
A男女間の、相手を慕う情。恋。
Bかわいがること。大切にすること。
C好むこと。めでること。




誰かを好きになったとき

愛しく想うときに

素直にその気持ちを言葉にしてみたりとか

或いは態度で示したりとか



どうやら私の考える"ふつう"というものが、まったくもって通用しないケースもあるらしい。



(ジェネレーションギャップ、なのかなぁ。)


悲しいことに「最近の若い子は〜」っていう枕詞を浮かべる頻度が高くなってきた気がする。

まだそんなに歳をとったつもりないんだけどな。でも10以上も違う彼女が相手じゃ仕方がないか、なんて。



とにかく"最近の若い子は"、色々と理解に苦しむんだよね。





『___、先生。』

「んー?」

『私の顔に何かついてますか?』


そう言ってナナコが不機嫌そうに喰ってかかってきた。そんな眉間に皺なんか寄せて、美人が台無しじゃないか。まあそんなところも余裕でかわいいんだけど。


「んーん。今日もかわいいな、と思って。」

『からかうのもいい加減にしてください。きもいんですけど』


頬杖をつきながらはは、と笑ってみせるもピシャリとかわされてしまった。思ったことを言っただけなのにきもいだなんて心外だなぁ。



魔法生物学(防衛術ではなくあくまで生物学、ね)が好きな彼女はとても勉強熱心で、私が部屋で飼ってるグリーンデローを見たいと申し出てきてからというもの、毎日こうして自主的に観察日誌をつけにやって来る。

教師らしくその姿を見守るフリして、二人きりの時間を楽しんでいるのはここだけの話。


かわいいとかきれいだとか好きだとか、全部ほんとうのことだし。

私はそれが必要なことだと判断したら迷わず思ったことを口にするタイプの人間だ。だからこんなやり取りももはや日課なんだけど、ナナコはといえば相変わらずの塩対応。


今だって水槽にかじりついたまま、こちらをチラリとも見ることなく悪態をついてる。

でもそれでよく、さっきからずっと君を見てるって気づいたね?


『…だいたい、教師の癖に生徒にそんなこと言うなんて、冗談にしてもタチが悪いですよ。軽いし、チャラいし。教師以前に男性として、いや人としてどうなんですか。』

「へぇ、ナナコは先生のこと、オトコとして見てくれてるんだ?」

『別にそういう意味で言ったんじゃないです』



水槽越しに目が合って、焦ったのかすぐに逸らされてしまった。そういうとこがかわいいんだってば。



彼女が座る簡易的なソファーの背凭れに手をついて、気づかれないように後ろから耳元に近づく。

さて。吐息でも混ぜて呟いてみようか。



「………、そろそろお茶にする?」

バサバサバサっ


さっきまでの小生意気な態度とは裏腹に、膝の上の羊皮紙や本やなんかを盛大に落としながらぴょーんと飛び上がるなり、耳を押さえてこちらに抗議の視線を向けてくる。


あーあ、真っ赤な顔しちゃって。





バレバレだけど大丈夫?

(素直に言えばいいのに、)





titleは 3秒死 様より。



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