ロゼ ノワール

□The Philosopher's Stone.
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- Norbert the Norwegian Ridgeback -










闇の陣営・参謀である私がホグワーツ入りすることでダンブルドア率いる騎士団連中の注意をこちらに逸らしながら

その実、主の魂を宿した男クィリナス・クィレルが暗躍。

我々の目的は、"賢者の石"__



しかしどういう訳か

その機密をセブルスが暴いてた。



一体どうやって





答えは一つしかない。












『レジリメンスを使ったわね』


昼間でも薄暗く不気味なこの薬学教室は授業のとき以外に立ち寄る者なども無く、しんと静まり返っていた。

その空間にパタン、と本を閉じる音がこだまする。


「何の話だ。」
『とぼけないで。私に近づいたのは隙をついて手の内を探る為だったんでしょう?迂闊だったわ。』
「……クィレルのことか」


次の瞬間に響いたのは、頬を叩く乾いた音。


「………」
『…、何度…裏切れば、気が済むのよ……』


声が震えてしまうのは

怒りなのか、悲しみなのか。


「誤解だ。私は、」
『言い訳なんて聞きたくないッ!!……少しは…昔みたいに……』




また

貴方に寄り添うことができると思ってた




「ロザリア、」


私達はあと何度

こうして近づいては離れてを繰り返せばいいのだろう。






貴方が"そちら側"に居る限り…どうしても

互いに杖を向け合わなければならないのか





セブルスが何かを言おうとして必死に言葉を選んでいるみたいだけど、私はそれを聞き届けることもなく黙って教室を後にした。

"もう私に近づかないで"と、背中に込めて。






そしてすぐに行動しなければならない。

…あの夜、森でクィレルを責めた彼の発言を私は一言一句聞き逃さなかった。


「あのハグリッドの野獣をどう出し抜くか、もうわかったのかね」



三頭犬の攻略法

鍵を握る人間がダンブルドアの他にも居る筈だというのはわかっていたけれど……ハグリッド…、彼の存在は正直盲点だった。

直接小屋を訪ねても良いのだけど、この件についてはダンブルドアがあらかじめ口止めしている可能性が高い。

私が探りを入れていると知られるリスクは回避したいところだ。




その晩、私は黒マントを頭からすっぽりとかぶり部屋を出た。

向かう先はホグズミード村


クリスマスに匿名で贈られた、ドラゴンの卵を抱えて…







:::



「くっそぉ〜ヒック、また俺の負けじゃねぇかぁヒック」
『はは、悪いね。一杯いただくよ』



ホッグズ・ヘッドは今夜も賑っている。


バーカウンターの端、照明も当らない様な暗がりでの"賭けごと"など、ここでは日常茶飯事。誰ひとり見向きもせず各々の酒に夢中だ。


「おめぇさんイカサマしてんじゃぁねぇだろうな〜?ヒック」
『確かめてみるかい?』
「おお、上等だ!もっかいやるべ!」

カードをきっているとマスターが私のスコッチをトンと置いた。

「ハグリッドよ、その辺にしといたらどうだ?やっこさん、トランプだけじゃなくて酒もなかなか強ぇぞ?」
「なーに言ってやがる!このままじゃぁ俺の財布がスッカラカンだってのよ!一勝でもせにゃ」
『わかったわかった。マスター、彼にも一杯』

マスターはにこりと笑って奥へ消えて行った。

「んなお情けなんざ要らねぇ!ヒック」
『一杯くらいいいだろう?ゲームとはいえ、先程から君には奢ってもらってばかりなんだ。それに…』

ハグリッドの手がぴた、と止まる。

『約束どおり、君が勝てば……』

小脇に抱えた大きな楕円形の包みをチラっと見せるとハグリッドがごくり、と生唾を飲み下す音が聞こえた。もうそろそろいい頃合いかな…

勝つ為のイカサマ法なんて幾らでもあると思うが、相手に…それも"酔っ払ったハグリッドに"、勝たせるのはそれなりに難しい。



「ン?んんん???」
『……おや、これはこれは』
「お、俺の…勝ちダァー…!!」

天井に向かって大きな拳を突き上げる彼を横目に、さっと杖を振ってカードを消す。

『おめでとう!私としたことが油断したようだ。さて、約束の品を』
「ほ、ほんとに…いいのか?」

彼にしては珍しく理性が働いているのか、あれほど欲しがっていたものがやっと自分の手中に収まったというのに、声を荒げることもなくヒソヒソと耳打ちをしてきた。

『勿論!正直、それを持っていたところでどのように保管したらいいかわからず困っていたんだ。君みたいな人が貰ってくれるのなら本望だよ。』

ハグリッドは目を輝かせた。
そう、彼ならきっと…"この子"を大切にしてくれるはず。

『……でも、わかっているね?さっきも話したけれどドラゴンの飼育はかなり難しい。それに法律だって』

ハグリッドはぶどう酒をグイっとラッパ飲みした。

「わぁーっちょる!ヒック、…フラッフィーに比べりゃ、ドラゴンなんか楽なもんだ」
『フラッフィー?』
「あぁ。俺がホグワーツで可愛がっちょる三頭犬だヒック」
『ホグワーツに!?しかもそれを君が…!君って本当にすごい!』
「はーっはっは!フラッフィーなんかなぁ、なだめ方さえ知ってれば、ヒックお茶の子さいさいよ」




『…へぇ、なだめ方なんてのがあるのかい?』





「あぁそうともさ!ちょいと音楽を聞かせればすーぐねんねしちまう」







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