ロゼ ノワール

□The Philosopher's Stone.
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- The Keeper of the Keys -










大きなホールケーキにピンク色のクリームを無心になって塗りたくる。同時にハグリッドがデコレーション用のソースを作っているのだけど、湯煎にかけてるボウルの中身が鮮やかなグリーンであることには目を瞑っておこう。


「……そうか、何モンかが小さなハリーの面倒を見てるっちゅう話は聞いてたんだが、まさかそれがロジーだったとはな…。当時俺はダンブルドアに反対したんだ、素性の知れねぇ奴にあの子を預けるなんざ、危険だ!ってな。おめぇさんなら話は別だ。すまねぇ。」

『いいのよ、そう考えるのは当然だわ。…その、ハグリッドは知ってるかしら?今あの子がどうしてるか』

ニコラスおじさまのことやホグワーツ入りでここ最近ハリーの様子を見に行けていない。あの一家の様子だし、そのことがどうしても気になっていた。またお腹を空かせてないだろうか?入学通知はちゃんと届いてる?

私の問いかけに、暖炉の前でボウルをかき混ぜているハグリッドの手が止まった。

「ひでぇもんだ。」

ハグリッドが一層声を低くするので思わずこちらも手を止める。彼は眉間にしわを寄せながら低く唸っていた。

「あそこのマグルたちゃ、どうもハリーをホグワーツへやりたがらねぇんだ。魔法をバカにしちょる。けど心配はいらねぇ。俺が責任を持って、連れ出してくるからな!」

『心強いわ。特別な忘却術をかけてあるから、あの子は私のことはもう、何も覚えていないの。本当は私も一緒に行きたかったけれど……あの子が入学した後も遠まきに見守っていくつもりよ。何かあれば、力になるわ。……ケーキ、ここに置いておくわね。』

「あぁ。ありがとうな。」

ハグリッドは大きな身体に似合わず、繊細で人情味もある優しい心の持ち主だ。鼻の頭を赤くしながらズビッとすすった。





小屋を後にして城へ戻ってから、ハグリッドに聞きたいことがもう一つあったのを思い出した。
ポケットの中から例の手紙を出してもう一度中身の紙きれを見る。…これについて何か心当たりはないか、ということを聞きたかったのだ。


例えば、何処かの扉を開ける仕掛けだとか…何かの鍵になるのでは、と私は踏んでいるのだけど…


彼は森の番人であると共にこの学校の用務員でもある。フィルチさんよりはダンブルドアの信頼も厚いみたいだから、城に関すること…とりわけ謎めいたことであれば、彼に情報を尋ねるのが一番のはずだ。

茶ばんだ古い紙きれに、たったの一文。

その文字の羅列を吸い込まれるように見つめながら自室へと歩みを進め、ちょうど角を曲がろうとした、その時。



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