ロゼ ノワール

□The Dark Ages
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- 宿 命 -









身体に力が入らなくなるまで激しく愛し合い、最後に名残惜しそうなリップ音を立てて唇が離れるとセブルスは息が整うまで私の首元に顔を埋めた。


心地良い気怠さに目を閉じて、彼の呼吸音に耳を傾ける。
ここは相変わらず薄暗い家だけど彼と過ごせるというだけで他には何も要らないと思えた。






「………陣営から、身を引けないか?」


即座に目を開く。
彼は俯いたままで、暗い天井だけが目に入った。まだ互いの熱も冷めやらぬままだというのに。
私の無言を「何故そんなことを聞くのか」と捉えたのか(概ねそれは正解だけれど)、彼はそのまま続けた。

「…騎士団に身を置く限りは当然、陣営の壊滅が第一目的なのだ。君を追いやる為の作戦会議など聞きたくもない」
『セブルス。私たちの目的はあくまで"償い"であり、その為にあの子を守るの。違う?』

今度は私の方が彼の沈黙を「違いない」と言ってる様に解釈して先を続ける。


『前にも話したと思うけれど…
貴方に貴方のやり方があるように、私は私なりのやり方をとっているまでよ。それでも…例え他の誰にも知られることがなくても、私たちは同じ方向を見据えている。これまでも、…これからも。そうでしょう?』


彼が顔を上げたので目を合わせる。

不安と、どうすればいいのかわからない焦り
贖罪と願望の狭間で胸を締め付けてくる鎖



きっと、この先何年も囚われたままでいるだろう。

それが業というもの。
私たちは背負わなければならない。




「君を、失いたくないんだ。」



二つの黒が切なげに揺れる。
わかってる。こんな世の中では自分の身を守るだけでも精一杯なのに、私たちの両手には抱えているものが多過ぎるのだ。
騎士団のことはよくわからないがセブルスの様子を見る限り、遅かれ早かれ戦火は必ず私たちに降りかかってくるだろう。そしてその時必ずしもお互いを守りきれるか、手を離さずにいられるか______その保証はどこにも、ない。それが現実。


私は悪夢にうなされる子供をあやす様に、そっと彼の頭を胸に抱えた。

『大丈夫。…大丈夫よ、セブルス。私はどこへも行かないから。』




騎士団の手にもかからないわ。


…貴方を除いては、ね。





「…時々思うのだ。

何もかも捨てて…二人で何処か遠くに

誰も知らない土地に、行ってしまえたらと。」




なんて素敵な夢物語だろう。
喜びで心の奥にじんわりと火が灯るのを感じた。

けれどもしそれができたとしても
鎖から解き放たれることなんて、きっと無い。

わかっていながらも『名案ね。朝になったら出発しようか?』と言って、笑ってみせた。
セブルスは自分がからかわれたと思ったのか不貞腐れ顔を上げて私を睨んだが、次の瞬間には「すまない」と言ってキスの雨を降らせた。



私はどうしても、涙を止めることができなかった。










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