ロゼ ノワール
□The Dark Ages
9ページ/82ページ
- 任 務 -
サマーパーティーから数ヶ月という時が過ぎた。
セブルスとはその間も任務で顔を合わせることが多くあったが、かつての"仲の良い学友"の面影はなく、ビジネスライクな会話で必要最低限の疎通しかはからなかった。
お互いにあくまで"仕方なく"、主の意向に従っているだけ。
あの日にできた溝はいつまでも埋まることのないまま、冬を迎えた。
:::
黒い空からふるいに掛けた粉のような雪がさらさらと絶え間なく降り注ぐ、夜。
二筋の黒い煙柱が雪原に影を落とし、その中から喪服に身を包んだ男女が姿を現した。
どちらも何も言わず、ぎゅ、ぎゅ、っと雪を踏みしめ二人並んで目の前の屋敷を目指す。
「…Mr.スネイプ。ハルフェティ嬢。わざわざお越し下さりありがとうございます。」
しんと静まり返ったエントランスに萎びた老執事の声が響く。
かつては多くの召使いや客人で賑わっていたのであろう屋敷の中は見る影も無く寂れていて、花瓶の花は枯れ、柱時計には蜘蛛の巣、といった有様だ。
『この度は、何と申し上げたら良いのか…』
「どうぞ、こちらへ…。」
悲しそうに微笑んだ執事は2人の上着を預かると、二階へと導いた。
大きめの扉の向こうは広い寝室であり、数えるほどの親族と肖像画に描かれた先祖たちがしくしくと空気を湿らせている。
部屋中に置かれた無数の蝋燭に火が灯され、ぼうっと暗闇に浮かぶような物々しい天蓋付きのベッドに、この屋敷の主人が眠っていた。
ロザリアは側に膝を付き、セブルスはその後ろに立って別れの挨拶を告げる。