ひゃくみラブ
□LOVE ACTUALLY
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※お風呂プレイ
ふぅ、と一息ついて部屋に戻ると皺の寄ったシーツの上はもぬけの殻だった。
カチャリ、とドリンクをテーブルに置いて先程まで我を失いながら夢中になっていたベッドの端に腰かける。
(……どうかしてるな、)
この土地特有の湿度と熱にでも浮かされたのか。
私には…、カレンや子供たちがいるんだぞ。
理由がどうあれ、女性と二人で、こんな、
『ハリー?ちょっと来て』
部屋の奥からシャワーの音と共に呼び声が聞こえてきた。理性と本能を中途半端に戦わせながら、重い腰を上げる。
頭では冷静な思考が働いているのに、一度燃えだした炎は未だ鎮まりきっておらず
心の奥で小さく燻っているのも、確かだ。
断りもなくドアを開けると、先程と同様に灯りも点けず窓から射し込む青い光に満たされたバスルームで彼女の後姿が美しい曲線を描いている。
それが、どうしようもなく私を誘った。
着衣のまま濡れるのも構わず、その曲線へと後ろから手を伸ばし肩口に鼻先を埋める。
甘い吐息と、香り、そして熱気
へそのあたりから脇腹を登って豊かな双丘へ這わせる手に彼女自身の手が重ねられる。同時に首筋をねっとりと舐めあげればビクンと肩を揺らした。
『ぁ……ん、…』
甘美な嬌声がどんどん私を追い詰めては引き返すことのできない場所まで連れて行こうとする。
手も舌も動きを止めず必死に自身への問いかけを繰り返した。
このまま、彼女と堕ちていくのか。
戻るなら、…戻るなら今だ。
『ぁ、ん…ぁっ、……』
家族を、裏切るのか
「はっ、…っ、」
理性の糸が今にも千切れてしまいそうな、その瀬戸際で、彼女の肩を掴んで身体を離し肩甲骨の間に額を当てて大きく息を吸い込んだ。
『…………』
キュ、
シャワーを止める音が不気味に反響する。
表情こそ見えないがその音だけで、彼女の寂しげな、怒りにも似た感情が伝わった。申し訳ない気持ちとそれでも物足りない気持ちとが混沌と渦巻く。
しかし…、君にだってパートナーが居るじゃないか。何故、と必死に言い訳を探しては目を背けていたい部分にさえ思考が傾いてしまう。
とにかく、私は、きっと
『…臆病者』
「……え、………っ」
彼女はくるりと身体の向きを変えたかと思えば突然荒々しく唇を重ねてきた。舌を捩じ込んで強引にそれを絡み合わせてくる。私はといえば彼女を挟むようにして両手を壁に付いて、情けなくも、立っているので精一杯の在り様だ。
やめてくれ。せっかく、ぎりぎりで立ち止まることができたというのに、これでは…
『…っ、…欲しい、くせに、…』
「、…ぁっ、…こ、ら、」
キスの合間に囁きながら既に反応しきってしまっている下半身をまさぐられ思わず声が漏れてしまった。
…どういうことだ。不本意に事が進行していくこの状況に酷く興奮している自分が居る。
『…考えては、だめよ……考えては……だめ…』
唇を離さずに囁かれる言葉が催眠術のように内側へ沁み渡っていった。
二人きりの、青い夜
例え罪が犯されようとも
私達自身のほかに
知る者など、居ない。
『あっ、…ぁあっ…!』
彼女を壁に押し付けながら獣の様に喉笛へ噛み付く。
熟れ過ぎず、若過ぎもしない旬の果実を味わうみたいにジュルジュルと音を立てながら鎖骨や乳房をしゃぶり尽くしてその甘さに酔いしれた。
左手で尻肉を鷲掴み、右手をそっと秘部へと滑り込ませれば明らかに粘着質な液体が、指を濡らす。
「…これは、なんだ?ん?こんなにして……」
ぐちゅぐちゅと卑猥な音がバスルームに響き渡り、もはや自力で立つことが出来なくなっているナナコは喘ぎながら必死に私にしがみついてくる。
そのまま彼女を抱え込んで一度バスタブの淵に座らせてから、窮屈で仕方ないベルトとファスナーに手をかけた。
パシャ…・・・
風邪を引かない様に湯を張り、その中でナナコを膝上に座らせる。
もったいぶる様に彼女の入口へ自身をあてがいながらゆるゆると腰を揺らしていると、小さく波打つ水面に呼応するかの如く反射した光の網目が彼女の美しい裸体を照らした。
「…さて。今から君と私は、立派な共犯者となるわけだ。覚悟はでき、」
言葉の終わりは彼女の舌に絡め取られ、同時に奥まで腰を落とされ自身が飲み込まれていく。
久しぶりに味わうその快感に、鼻から熱い空気が抜けた。
ッパシャンッパシャンッパシャン
『あっ、ぁっ、ぁんっ、ゃっあ…!!』
夢中になって彼女を突き上げる。
その間は何も考えることなどできなかった。
『ああ、はりぃっ、ぁっ、おゆ、がっ、はいって、…ぁっ、ぁぁん!あつ、ぃっ』
のぼせてしまう前にザバっと立ち上がり、彼女の手を淵につかせてすぐに後ろから挿しこむ。
『きゃっ、ぁっ、そん、なっぁっぁっぁっ』
「っ、く、…も、う……!」
足元で波打つ湯の水音、肌同士が激しくぶつかる音、本能を刺激する嬌声、体液の混ざり合う音、すべてが反響し合って
青に、溶けていった。
ブルーナイトブロッサム
『…後悔してるでしょ。』
「………さあ、どうかな。」
微睡みながら生返事をする私の頬を、白い手が撫ぜる。
静かに視線が絡むとナナコはうっすら微笑んだ。
妖しく、美しく、…寂しそうに。
彼女の温度に包まれながらどうしても重たい瞼がゆっくりと閉じていく
最後に見たその笑顔が、今も酷く私の脳裏に焼きついて離れないのだ。
その翌朝、彼女の姿はどこにも無かった。
- END -
ご覧いただきありがとうございました!
ナナコさんとの出会いが忘れられなさ過ぎて不倫癖ついてたら面白いなぁという妄想。ひどい。笑
帰国後しばらく時を経てから二人が再会しちゃう話もいつか書きたいです!が、ひとまずはこれにてm(_ _)m