神楽と神威の姉は真選組女隊士!?
□真選組女隊士!
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今朝から暑さのせいかグダグダとした空気をどよがせていた。
そのな真選組屯所前に、一人の女性が佇んでいた。
黒い制服に身を包み、紫色の大きな傘を片手に。その佇まいはまるで絵に描いたように様になっていて、どこか夏の暑苦しさを忘れさせてくれる。凛とした姿。
普通の着物を着、腰に刺さった2本の日本刀がなければ江戸中の男が黙ってはいないだろうに・・・。
長い髪は風に揺られさらさらと流れる。美しい顔立ちをしているにもかかわらず、はっきりと顔を見るには傘が邪魔だ。
「暑い・・・」
そうぼやいた声は誰もが聞き惚れるほど透き通った優しい、けれど芯のあるそんな声だった。
よく見れば彼女の着ている制服は真選組のそれと酷似していた。
男用しかない制服のたった一つの女性用隊服なのだろうか。
彼女が次にとった行動は・・・
ひとつ溜息をついてから、片足の膝を思い切りあげ、体重をかけながら真選組屯所の入口の門を蹴り上げたのだ。
半径1キロほどに渡る時なりと、壮大にもんやら壁やらにヒビが入り、挙句崩壊する。
ゲホゲホと立ち込めた土埃にむせたのだろうか、二、三回ほど咳をしていた。
「あ、やりすぎたかな・・・?」
苦笑いをしつつもケロッとして足元を確認し、数回片足でその場を擦る。グラウンドに書かれた絵を消すように、そして堂々と入っていく。セミの鳴き声を傘や背中全体に受けながら・・・
このあと、真選組局長が悲鳴を上げるまで何秒もない。
彼女が佇んみ、咳をした場所に数滴の赤いものが落ちていたことに気づく者はまだいない。
目に入ったとしても、擦れて薄くなったそれはそのうち黒くなり、アスファルトとどうかしてしまうだろう。
彼女の姿が屯所前から消えたあと
「ちょっとぉおおおーーーーーー!!!?」
という誰かの悲鳴が聞こえたり聞こえなかったり・・・