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□救済措置
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はて、困った。
何に困ったかというと、特に生きていく上では支障をきたさない程度のものなのだが、恋人との関係に亀裂が入ること間違いなしで、その点では大変なことになった。
イギリスのバレンタインでは、お分かりの通り、男性が心惹かれている女性に匿名でカードを送るのが主流。
もちろんそこにチョコレートを付けたり、赤い情熱的な薔薇を送るのもロマンチックで素晴らしい。愛を素直に伝えられる、そんな日が今日、バレンタインなわけなのだが。
困った。匿名のカードが2通届いた。
いや、わかってはいる。片方はきっと愛しい愛しいわが恋人、アメリカだということは。
しかし、2通届いてしまった。片方は先程明記した赤い薔薇、もう片方は滅多に手に入らない極上のワイン。
アメリカが薔薇というのもワインというのも、はっきり言ってどちらも考えにくい。だからといって、片方はアメリカなわけで、そう信じたいわけで、だからこそ迷うのだ。
「……っつってもなあ」
俺は頭を抱える。あいつが俺に赤い薔薇を?いつも庭いじりしていると薔薇に嫉妬して拗ねるのにわざわざ送るというのが考えられない。
俺が薔薇を好きだから送ってくれた?あいつはそこまで俺のことを想っていないだろうし、むしろ自分中心だから確実にない。
ワインに至ってはもっと考えにくい。このワインは特に値段が高いわけではない。しかし、味は世界一とでも言えるほどだ。
あいつは酒を飲まないから、送るとしてもただ値段が高いものをチョイスするだろう。
はて、困った。
感謝のメールを素直に送ろうとしたらこれだ。間違った方を送ったらあいつは絶対怒る。自家用ジェット機で家を壊された例も聞いているので、怒らせるのはどうしてでも避けたい。
しかしこのままでは、メールすら送れない。
どうするべきか。俺は腕を組んで目を閉じる。しかし数秒後、俺はすぐに視界に光を入れた。
待て。
もう一人、俺に送ってきたやつは誰だ?
いやいやいや、そこに一番最初に気付くべきっだっただろ自分。一番の違和感はそこだろ。
アメリカのことで頭がいっぱいだった。我ながら恥ずかしい。
「考えろ自分……」
暗示をかけながら、どうにかして心あたりを探す。しかし悲しいかな、俺にこんな素敵なことをしてくれる人なんて思い浮かばない。
そもそも男か女かもわからない。女だった場合丁重にお断りしたいし、男だったら尚更だ。俺は男色家ではない。
でも、きっと可愛い俺の国民からだ。きちんとお礼はしたい。
問題は、カードに書かれている言葉。
「I hope you know how much you mean to me.」
貴方が私にとって、どれだけ大切な人なのか知っていてくれるように。
「You have been the only one for me.」
貴方は私にとって、ずっとただ唯一の人。
どちらも終わりは「From your Valentine」。俺はこの内容によって悩まされている。
意外にロマンチストなアメリカだ。もしかしたらどっちも、という可能性が浮上してくる。
ソファの上で、テーブルに匿名のカードを眺めている男性は、きっと今この瞬間俺だけ。
「うーん……」
天井を見上げて唸った瞬間、俺の声はインターホンの音によって遮られた。
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