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□これこそが
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「帰るなんて許さない」





突然の恋人の言葉に、思わず俺は呆けた顔で立ち止まった。


今日は、俺と彼との休日が4日も重なるという奇跡の連休の2日目。俺は自家用のジェット機をぶっ飛ばして、アメリカからはるばるイギリスの首都ロンドンまでやってきた。


丸3ヶ月会えてなかったから嬉しかった。結構俺も彼に会えなくてイライラしてたから、もしかしたら上司たちの粋な計らいだったのかもしれないこの連休。


でも結局2日目で喧嘩して、彼の家を去ってどこかホテルでも取ろうとした矢先、言い放たれた言葉がこれだ。


真夜中の12時を告げる、彼の家の振り子時計。

その音すら聞こえなくなるような衝撃を受け、俺は彼のいる方を振り返った。



先程までの言い争いの雰囲気はどこへやら、イギリスの綺麗な瞳は少し濡れていて物欲しそうにこちらを見ている。頬もぷくっと膨らませちゃって、可愛いとでも思っているのかなこの可愛い人は。


「やだ。帰っても地の果てまで追いかけてやる」
「なんて物騒なことを。本当にしそうで怖いぞ」
「怖がれよ。本当にするからな」


むくんだ顔のまま俺に近付いてくるイギリスは、夜のせいなのかどこか色気を孕んでいて、俺は思わず唾を飲み込んだ。秒針の音だけが響くこのリビングで、俺と彼との距離は今たったの10cm。


「帰るのか?」


彼の声は色を含んでいて、それに加えて俺の腰に手を回してきた。その手付きは確実に俺を誘っている。

「……なあ?」
「っ。ちょっとどこ触って」
「なあ、アメリカ?」

イギリスは俺の腰だけではなく前までもを触ってきた。不意にきたその感覚に身をよじらせると、俺の恋人はにやっと笑って俺の瞳を覗き込んできた。


質問を変えよう、そう言ってイギリスは俺から身を離した。高ぶっていた体の熱が行き場をなくす。

そんな俺の様子を見ながら、彼は恍惚な表情を浮かべて俺を指差した。


「その体で、帰れるのか?」
「……最低」


俺はそう言ったあと、勢いよく彼の手首を掴んで歩き出す。俺の向かう先を察知したイギリスは、後ろで小さく笑ったあと、最高だよmy darling、そう言った。


俺がドアを開けた部屋は、もちろん彼の寝室。










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