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□嗚呼、成程。
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「イギリス好きだ!付き合おう!」
「OKアメリカ!キスしてダーリン?」
「「っ………!」」


世界会議・in日本。

いつもと変わらない面子で行われた会議後、とある二人の行動にその場にいた全員が戦慄した。否、固まった。


とある二人ことアメリカとイギリスは、周りの目などおかまいなしに頬にキスを落とし合う。その様子を見て周りの各国は危うく息をすることを忘れそうになる。


「……目の前で見るインパクトやばいね」

苦笑いをしてか細い声でそう言ったのはフランス。愛の国のこの微妙な表情はなかなか珍しいものである。

「わかっていてもこれは……目に毒ある……」

中国は目を背けて腕を組んだ。フランスとは違い、嫌悪感を隠そうともしないその表情にドイツがため息をつきつつ小さく笑った。


そう、アメリカ、イギリスに限らず、目の前の惨状はここにいる全員がわかっていたことなのだ。それでも実際見ると少なからず衝撃が加わった。主に心の面に。


「もう会議終わったことだし、一緒に食事でもどうだ?……その後遊びたいな、なんて……お、思ってないんだからな!」
「ははっ、君は相変わらず可愛いな!そうだね、俺も君を食事に誘おうとしてたからナイスタイミングだよ!その後日本を満喫しようじゃないか、もちろん二人でっ」


そんな国たちの気持ちなど露知らず、アメリカとイギリスは肩を抱き合って物凄い至近距離で話を進めている。端から見ると、付き合っているバカップルのようだ。
たまにイギリスの髪を指で弄るアメリカはただの良い彼氏で、その行動に顔を赤く染めるイギリスはただの初々しい彼女。その様子を見て、「わあ、お花が飛んでる」と笑顔で言い放ったのはまさかのイタリアだった。


「おやまあ可愛らしいかっぷるではありませんか見ていて幸せになります」
「日本せめてシャッター音切ってから写真撮ってパシャパシャうっさいよそれ」


フランスに指摘され、「おや、いつのまに手が」そう言いながら慣れた手付きでカメラを操作したのは日本。滅多に見れない仲の良いアメリカとイギリスを写真に納めている。日本製の良質なカメラで、いつも持ち歩いてるのかというドイツの質問には沈黙の笑みだ。

「アメリカくん幸せそうだねー、僕にも幸せわけてよ」
「幸せくらいはわけてやっても良いけどイギリスだけは渡さないぞっ」
「言ってないし欲しくもないよ」

ロシアがいつもの笑顔でぴしゃりと断言する。それに対してアメリカはイギリスの肩をぐっと近付けて、また頬にキスをした。


「なあ、もう行こうぜ?こいつらに構ってる時間がもったいない」
「俺もそう思うよ、君と長く一緒にいたいからね。じゃあ行こうか!」


互いに顔を見合わせて笑ったあと、二人は会議室の出口に向かって歩き出した。その手は繋がれており、他の国たちはいよいよ世間体が気になり始める。

「おい二人とも、夜は会食があるから5時にはここに戻って来るんだぞ」

ドイツがそう声をかけると、二人は同時に振り返った。そしてドイツの言葉を吟味するように頷いた。

「わかってるさ、言われなくてもすぐ帰ってくる」
「もしかしたら5秒で戻ってくるかもしれないぜ」

そう言って不敵に笑い、二人はまた歩き出して会議室を出ていった。
アメリカ、イギリスの言葉に、ドイツを始め全員が苦笑いを溢す。


「そっかぁ、あれ嘘なんだった……忘れてた」


イタリアが思い出したようにそう発した。隣にいた中国も「私もある」とイタリアに賛同する。

「あまりにもお二人が演技派なので危うく本当にそうなのかと思ってしまいましたよ」

日本がカメラの画像を整理しながら呟いた。その声のトーンは少し名残惜しそうだ。


「あの二人も、やりたくてやってる訳じゃないもんね……」


ロシアの言葉に、全員が鷹揚に頷いた。





話は、前回ロンドンで行われた世界会議まで遡る。




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