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□二者択一の幻想
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「…なるほど。夢の中のそのイギリスってやつと、俺が似てたってことだな?」
「似てたっていうか君だったんだけどね」


抱きついて、そのまま連行された朝の生徒会室。朝日が眩しい。彼の後ろから光が入ってきて、2重の意味で眩しい。

それ以上に、俺の心は崩壊寸前。

好きな人であり、夢の中の「イギリス」だったあの人は、現在俺の目の前で腕を組んで難しい顔をしている。その顔からは、まだ赤みが抜けていない。

いや、それは俺も同じ。大好きな彼に抱きついた説明を必死の思いで延々と話したのだ。喜びと羞恥で爆発しそうだった。というか、現在進行形で。


こうやって冷静に考えてみれば、俺はすごい勇者じゃないのかとすら思えてくる。夢の中のあの人だからとはいえ、好きな人に抱きついてそのまま二人きりの時間をゲット出来たのだ。
1年燻り続けた結果がこれだ。よくやった自分、ありがとう夢の中のイギリス。


「人違いだ。俺の中にアメリカという人物はいないよ」

彼の声を一語一句インプットする。そのあとに言葉の意味を理解して、いやちょっと待って。

「だから俺は君の大事な人にはなれない。悪いな、ジョーンズくん」
「ま、待って!」

俺がそう叫ぶと、彼は目をぱちくりさせてこちらを見た。可愛いな、でもそうじゃない。

きっともう、このような機会は2度と巡ってこない。今が絶好の好機だ。
今、言わなければいけないことがあるんだ。


「でも、こうやって出会ったのは偶然じゃないはずだよ!俺と友達になってくれないかい!?」


バカか自分、俺が伝えたいのはそれじゃないしもう少しまともな言い回しはなかったのか。あまりにも低レベルな物言いは自分でも呆れた。


でも俺は至って真剣だ。顔が赤いのを感じる。
目の前の彼は驚きで目を丸くしている。数秒固まっていたが、その後彼はふっと笑ってこちらを見た。

「お前…変なやつ」
「えっなんで」
「俺なんかと友達になろうとか。不思議ちゃんにも程がある」

不思議ちゃんって。きっとそれは君が気付いていないだけで、君と仲良くなりたい人、あわよくば付き合いたいと思っているやつなんて山ほどいるさ。主に後者で。


「変じゃないよ、俺ずっと前から君と仲良くなりたいって思ってたよ!お願いします!!」

ガバッと頭を下げた。恋人になるには、まずは友達からってよく言うじゃないか。その第一段階を落としたら、俺は一生彼と一緒になることは出来ない。


今しかないのだ。頑張れ、俺。

「……ははっ」

頭を上げないでいると、彼が声を上げて笑った。俺はもちろん顔を上げた。
そこには、綺麗な笑顔でこちらを見ている彼の姿。


「頭下げんなって、俺なんかでよければいくらでも。俺はアーサー・カークランドだ。よろしくお願いするよ」


俺は一瞬にして笑顔になった。きっと今まで生きていた中で一番最高の笑顔。

抱きついて良かった。


「俺はアルフレッド・F・ジョーンズ!よろしくね!!」

そのまま俺は勢いに任せて彼の手を握った。一応握手のつもりだったが、俺の力が強すぎて握手とは言い難くなった。

そこから伝わる体温に、ああ、やっぱり好きだなって思ったのは、彼には内緒。





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