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□嗚呼、成程。
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ロンドンで開催された会議をいつものように踊らせ、紆余曲折ありつつも無事終わらせた夜の会食パーティ。
開催国がロンドンということで、イギリスは仕事で最初の内、席を空けていた。何やら部下が重大なミスを犯したらしい。
特にイギリスが行く理由もなかったらしいのだが、会議後すぐに席を立ったイギリスは相当な部下想いだ。
『あいつミスばっかだけど、良いやつなんだ。俺の下から飛ばされるのはもったいない』
日本に向けてそう笑ったイギリスは7時には着くと言っていたのだが、ただ今の時刻は既に8時過ぎ。
イギリス抜きで先に始めていた各国も、丁度よく酔ってきたところだ。
「あっれ〜?アメリカ、珍しく飲んでるじゃないの」
「まあね。今日は口煩い紳士がいないからさ」
この日は、本当に珍しくアメリカも酒を嗜んでいた。いつもは会食前にアメリカに酒を禁止する男がいるのだが、今はその彼がいない。アメリカは確かに出されたシャンパンを飲み干していた。
アメリカが酒を飲むというのは今までなかったので、面白半分で皆酒をアメリカに薦めていく。優しいカクテルから少し強めのワイン。流石にロシアがウォッカをアメリカに飲ませようとした時は止められたが。
「アメリカがお酒飲むなんてね!なんか楽しいよーはいワイン!」
「イタリアこれもう3杯目なんだけど」
アメリカがイタリアからのワインを断る。そろそろ良い具合に酔ってきた頃だ。
しかし、新しい刺激を与えてくれる酒をドイツから薦められたアメリカは断れない。
「アメリカ、今度はこっちのビールもどうだ?」
「ん!頂くよ。ありがとドイツ」
瓶に入ったビールをドイツから受け取り、アメリカはビールを口に含んだ。それを見て、フランスは笑う。
「いやあ、イギリスにも見せたいねえ」
「っ別に今彼は関係ないだろ」
「焦っちゃって。いないから飲めるんだよな、すまんすまん」
酔っているのだろう、バシバシとなかなか強い力でアメリカの背中を叩いたフランスは、「でも飲み過ぎんなよ?」とアメリカに警告してそのままどこかに行ってしまった。
ただの警告で済ませたことを後悔するのは、その30分後。
「おいこら。こいつに酒飲ませたやつ、誰だ」
イギリスが遅れて会場にやって来たときは、アメリカは既に取り返しのつかない状態に陥っていた。全員が、イギリスの前で肩を竦める程度には。
イギリスは全員を前に仁王立ちしていた。しかしその姿に纏っている威厳はいつもより5割ダウンしている。
「イギリス、君のこと待ってたんだよー?」
イギリスにまとわりつく大国、アメリカによって。
いつものイギリスに対しての態度はどこに捨ててきたのか、イギリスに抱きついて真っ赤になった顔をイギリスに近付けている。そのおかげでイギリスはまともに説教を出来ていない。
「お前……離れろ酒くさい」
「やぁなこった。折角君に会えたのに」
イギリスはため息をついた。周りの国々は、普段絶対有り得ないこの情況に目を見開いた。
「アメリカさん…が、私を誘っている……」
「日本の場合カメラを誘うの間違いだねカメラしまって」
取り乱し始めた日本を軽くなだめたあと、フランスはちらりとアメリカを見た。その顔を数秒見つめたあと、フランスは何かを思い付いたように「あ」と声を上げた。そしてニヤリと不敵に笑った。
「おいアメリカ、お前がこうなったのはイギリスのせいだよな?」
「は?髭てめえ何適当なこと」
「そうだぞー、イギリスが来なかったからこんなに飲んじゃったんだぞー」
「お前も乗るな……」
突然のフランスの茶々にまんまと乗ったアメリカに、フランスは笑顔を向けた。ドイツは悟る。フランスのこの顔は、何かよくないことを考えているときだと。
「じゃあ、イギリスには責任取ってもらわないとなぁ?」
ね?とフランスは隣にいた中国に同意を求める。中国は少し間を置いたあと、大きく頷いた。
「兄ならば落とし前つけるよろし」
「なんかいろいろおかしくないか。ていうかなんで俺のせいなんだよ」
あと元兄だ、そう言い直すイギリスは少し辛そうだ。
しかしそんなことおかまいなしに、フランスは中国の言葉にうんうんと頷き、じゃあさ、と立ち上がった。
「イギリスは1つアメリカの言うことを聞くっていう罰ゲーム、どう?」
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