(( 転載禁止です ))
*→新しい
繋がれた小指がひどく熱くって痺れる あなたといると疲れる
約束をされて感じるあなたとは多分一生を共にはしない
かなちゃんは弱いよねってはっきりと言ったからこそ貴方が好きだ
梅雨ぐもりくちなしの花の白きことまろやかなきみの頬に寄せれば
好きな人は好きで嫌いな人は嫌いかくて二十余年を終えたり
三日月の柔き鋭角指先に食い込む痛みが生きてる証拠
ああ皐月かくも優しき月なのに数秒ごとに人は死にゆく
いつまでも変わらないよう祈りますあなたのえくぼと額の白さ
寂しさに缶チューハイを傾けて明日の時間割を眺めてる
八月のラムネの瓶を傾ける麦わら帽子のきみ愛しけり
近寄ればイカロスの二の舞になるきみはまさしく夏の太陽
ひまわりを背にして白のワンピース絵に描いたように夏の美少女
チューハイのひと缶なんかじゃ酔えなくてそれでも寝るしかない 大人だから
「好きです」と言えたらきっと楽なのに言葉のかわりに投げる消しゴム
もう今日が何曜日かさえ分からずに天井を見上げている午前五時半
愛しさは乱反射するガラス製金魚鉢にも似たそれの色
アボカドを手に取り気づく半年も血を見ていない卵形の実
雨音にかき消される声たすけては永遠に誰にも届かない
せつなさに握り締めたるスカートに残りし皺を泣きつつ伸ばす*
「良い曲ね。なんて曲なの?」「ユモレスク」「わたし好きだわ、また聴かせてよ」
くちなしにくちづけた雲を眺めつつくゆらせた煙が首筋を這う*
神様の吐息のように風が吹くそのうちに夏の匂いがするよ*
.