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□隠れ鬼ごっこ
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ハンジ
「兵歌、斉唱〜!!!」

兵士達の歌声で、エルヴィンは飛び起きた。

エルヴィン
(寝過ごした…?まさか)

急いで着替え、声のする方へ向かう。

見ると、兵舎の食堂に人が集まっていた。

ハンジ
「やあ、おはよう、エルヴィン」

エルヴィン
「ハンジ、これはいったい」

エルヴィンが見渡すと、どうやら若い兵達が集まっているようだ。

エルヴィン
「!」

何故か、分隊長達もいる。

エルヴィン
「リヴァイ、お前まで」

リヴァイは大きくため息を付く。

リヴァイ
「ハンジ。趣旨を説明しろ」

ハンジ
「任せてよ!今日は何の日だ?」

エルヴィン
「?」

ハンジ
「自分の誕生日だろう?忘れたの?」

エルヴィン
「!」

誕生日。

そんなことすっかり忘れていた。

ハンジ
「ということで、エルヴィンにプレゼントをしようと思ってね」

リヴァイ
「もう一度言うぞ、お前ら」

リヴァイは兵達の前に出る。

リヴァイ
「お前らは、今日の17時までエルヴィンを隠せ。それが出来たら、褒美をやろう」

ハンジ
「じゃじゃーん!有給1日、もしくは高級菓子の詰め合わせプレゼントだ!」

喜びの声があちこちから上がった。

エルヴィン
「おい、私は許可した覚えは」

ハンジ
「いいじゃない。その位。ケチケチしない」

ハンジはエルヴィンの肩をバシン、と叩く。

ミケ
「菓子代は俺たちが出す」

リヴァイ
「俺か分隊長達がエルヴィンを捕まえたら、そこで終了だ。腹筋300回と兵舎内全清掃を命ずる」

不満の声が大きく上がる。

リヴァイ
「…ということだ」

エルヴィン
「よく、わからないが」

ミケ
「…要するに、隠れ鬼ごっこみたいなもんだ」

エルヴィン
「私の誕生日に託けて、騒ぎたいだけだな」

ハンジ
「そうとも言う。でも、皆やる気だよ!」

おおお、という声が、兵達から上がった。

リヴァイ
「全員参加してるわけじゃない。通常業務は問題ない」

エルヴィンは皆を眺め、ふう、と息を吐いた。

ハンジ
「よし!エルヴィンも覚悟を決めたみたいだから、始めようか!」

リヴァイ
「今から10分後にスタートだ。作戦を立てるなり、逃げるなり、好きに使え。俺達は兵舎の入り口にいる」

ハンジはピー、と笛を吹く。

ハンジ
「この笛を吹いたら、始めだからね」

そう言って、分隊長達は食堂から出て行った。


エルヴィン
「…」

兵士達は、それぞれ話し合っている。

エルヴィンの脇に、一人の男が並ばされた。

「よし、背格好似てるな」

「団長、これを」

エルヴィンはマントを渡される。

隣の男も、マントを渡された。

二人で羽織って顔を隠す。

「うん、まあまあかな」

「団長を匿う班と、こいつを匿う班」

「後はかく乱させる班か…」

「武器は使っちゃ駄目なんだよな」

「でも道具は禁止されてない」

エルヴィン
「…」

エルヴィンはなるほど、と思う。

通常、団長ともなれば若い兵士と共に過ごすことなど無い。

書類だけでは解らない、彼らの特性が見えてくる。

大人しいと思っていたら、行動力の高い彼女。

体力馬鹿かと思えば、冷静。

お調子者の彼は、人望が高そうだ。

エルヴィン
(なるほど…)

分隊長とリヴァイからの、これがプレゼントというわけか。

「団長、ではこちらへ!」

年長者がしてやられるのを見るのも、悪く無い。

エルヴィンは笑って、若い兵士に従った。







結果は…ともかくとして。

翌日、エルヴィンから皆に菓子が振舞われた。

ハンジ
「若い子達は、あなたと話せたって喜んでたよ」

エルヴィン
「こういう交流も、必要だな」

ハンジ
「…誕生日、おめでとう」

分隊長たちからは、エルヴィンにワインのプレゼントが贈られた。



Happy Birthday エルヴィン!



2016/10/14
end

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