Dream L
□Such Sweet Sorrow
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いつもの道が、まるで違う道のように思えた。
物が焼ける匂いと灰が、まだ『図書館』は見えないのに漂っている。
時折転びそうになるのを、リヴァイが腕を引いて助けた。
漸く『図書館』が見える位置まで来た。
○○○
「…!」
酷い匂いと、煙で辺りが良く見えない。
ひゅう、と強く風が吹いて煙を飛ばす。
様変わりしていた。
もともと崩れてはいたが、もう建物の形すら残っていない。
父と一緒に探索した場所も。
彼がよく本を読んでいた所も。
あの沢山あった色々な、物も。
みんな…
良く分からないまま、○○○は『図書館』まで駆け出していた。
突然、腕を掴まれ、体を引かれた。
エルヴィン
「…○○○!」
○○○が振り返ると、そこにいたのはエルヴィンだった。
○○○
「エルヴィン…」
何が起こっているのか、わからない。
エルヴィン
「これ以上近づいたら危ない」
○○○
「でも、燃えて…」
エルヴィン
「ここが、君が言っていた『倉庫』だね」
エルヴィンは静かに、そう言った。
○○○
「…!」
風が煙を竜巻のように巻き込んで、空へ昇ってゆく。
エルヴィン
「必要なものは、こちらで回収させて貰った。あそこにはもう何も無いよ」
理解するまでに、時間が掛かった。
もしかして、これは…
○○○
「…エ、ルヴィンがやったの…?」
エルヴィン
「ああ」
○○○
「ど、して」
○○○はエルヴィンを見上げる。
青い瞳がこちらを見つめている。
怖い、と感じたのは、その色のせいだろうか。
エルヴィン
「…知識、というのは財産だよ。君一人のものじゃない」
○○○
「!」
エルヴィン
「十分目を瞑ったつもりだけどね。しばらく食べる分の蓄えはできただろう。顧客も増えたし」
○○○
「そういう、問題じゃ…」
エルヴィン
「このままにしておいたら財産は腐敗し、この場所は死体置き場にでもなるだけだろう。そうなる前に、手を入れたほうがいい」
○○○はもう一度、『図書館』の方を見る。
残骸からは炎がチラチラと揺らいでいる。
ガタン、ガタ、と石が崩れてゆく。
○○○
「…」
瞬きをしても、この光景は変わらない。
大好きだった、場所が。
エルヴィンはぽん、と○○○の肩を叩くと、その場を離れた。
エルヴィンの視線の先には、まじめな顔をしたハンジと、険しい顔をしたリヴァイがいる。
リヴァイ
「…」
エルヴィン
「そう睨むな。後は任せた」
リヴァイは舌打ちをすると、○○○の方へ向かった。
エルヴィンはその後姿を目で追った。
リヴァイは、座り込む○○○の肩に手を置いた。
リヴァイ
「…○○○」
○○○
「わ、たしのせい?」
リヴァイ
「!」
○○○
「私が、わたし…」
リヴァイ
「○○○」
少し強く名を呼ばれ、リヴァイを見上げた。
そのまま彼に抱きついた。
足が震えて、立てない。
私がここに来ていたから?
私がエルヴィンにここの事を言ったから?
私がエルヴィンを振ったから?
私が、もし私が…
リヴァイはポン、ポン、と○○○の背中を叩いた。
○○○の叫びが、辺りに響いた。
ハンジ
「…エルヴィン。いいのかい?」
エルヴィンは呼ばれて、ハンジの方を見る。
エルヴィン
「…何が?」
ハンジ
「小鳥ちゃんのこと」
エルヴィン
「…小鳥は、巣立つものだよ」
ハンジは大きくため息をついた。
なんでこの男は素直じゃないんだろう。
きっと彼も、彼女を好きだった。
ハンジ
「あなたはやっぱり、変態だね」
エルヴィン
「?」
ハンジ
「好きな子より、こんなものを選ぶんだから」
エルヴィン
「…誰かにも言われたな」
そう言って、エルヴィンは笑った。
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