Dream L

□more and more...
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公爵の娘は名をディアナと言った。

ころころと笑う気さくな子で、笑顔がとてもチャーミングだ。

大広間の一角に、個々人で話せるよう区切られた空間があり、○○○たちはそこで話していた。

柔らかいソファと、大理石のテーブルには色とりどりの菓子が置かれている。

ここから大広間の様子も見える。

時折公爵の知り合いが、ディアナに挨拶に来た。

ディアナ
「それで、エルヴィン様は…」

どうやらエルヴィンのことが好きらしく、○○○は彼に対する質問攻めにあった。

○○○
「それはですね…」

恋、というより憧れのようなものだろうか。

彼について知っていることは、少々飾って話をした。

どのくらい話していたのだろう。

エルヴィン
「お話は、弾んでいますか?」

当のエルヴィンが顔を出した。

ディアナ
「え、ええ」

途端、ディアナの頬が染まる。

純粋に、可愛いな、と思う。

○○○
「あの、私お化粧直してきますね」

そう言って立ち上がると、○○○は化粧室に向かった。

邪魔をしちゃ、悪い。



世の中には、こんなに華やかな世界があるのかと思う。

滅多に口に出来ないお菓子やお酒が、至る所に溢れている。

これで、身内のパーティというのだから、大々的にするものは一体どんな感じになってしまうのだろう。

トイレを出た○○○は、すぐにディアナの所に戻ることも出来ず、会場をふらふらと歩いていた。

従僕
「いかがですか?」

トレーに乗っている飲み物を差し出される。

断り方も分からなかったので、ひとつ貰った。

○○○
「ん」

白くて透明なそれは、甘くて美味しい。

じわん、と体が熱くなった。

○○○
(お酒だ…。涼みに、)

○○○はグラスをテーブルに置くと、ベランダに出た。


月が冴え冴えと広いベランダを照らしだしていた。

庭園の緑の中を通ってきた風は、火照った体にひやりとして心地が良い。

○○○が少し歩くと、人影があった。

○○○
「!」

そこには、リヴァイが居た。

ハンジ
「ん?リヴァイ、知りあい?」

二人の様子を見て、隣に居た人が彼に声を掛けた。

リヴァイ
「お前、なんで」

○○○
「え、…仕事、で」

リヴァイ
「そんな格好でか?」

○○○
「!」

仕事ならば、普段の質素な格好でいいはずだ。

調査兵団と分かる制服の彼らとは裏腹に、○○○はヒールのある靴を履き、ダークブルーのロングドレスを身に着けている。

肩口にまで伸びた、白いシルクの手袋は月の光を反射して艶めいて、シンプルなパールのネックレスが、大きく開いた胸元に映えていた。

ハンジ
「あ、ああ、私は飲み物を貰ってくるよ」

そんな事を言いながら、ハンジはベランダを後にする。


ここにいるのは、二人だけだ。


○○○
「お仕事、よ。エルヴィンが公爵を紹介してくれたの」

リヴァイ
「エルヴィンが?」

○○○
「娘さんの話し相手にもなって欲しいって。それだけよ」

リヴァイ
「ほう…」

○○○
「そっちこそ、ずっと来なかったくせに…」

リヴァイ
「!」

拗ねた顔をした○○○にリヴァイは近づく。

その頬に、リヴァイの手が伸びる。

○○○は黙って、それを受け入れた。

リヴァイ
「忙しかった」

○○○
「…」

リヴァイ
「寂しかったか?」

○○○
「!」

自信有り気にそんな事を言うので。

○○○
「そっちこそ」

憎まれ口をたたいてしまう、と。

○○○
「ん、んんっ」

するりとリヴァイの手が頭の後ろに回り、唇を、塞がれた。

○○○
(お酒の、味、)

ちゅ、と音を立てて唇が離れる。

○○○
「…?」

リヴァイは○○○のドレスの肩口に指を掛ける。

リヴァイ
「…今すぐ、脱がしてえな」

○○○
「!?」

リヴァイ
「エルヴィンの見立てだろう?」

そう言って、ネックレスにも触る。

○○○
(あ、そういう、事…)

リヴァイの眉間のしわが深くなっているようで、○○○は思わず笑ってしまった。

する、と、リヴァイの手が腕をなぞり、手袋を下ろす。

隠れていた傷痕が露になった。

リヴァイ
「…残ったな」

○○○
「…殆ど分からないわ」

○○○の腕には、傷痕があった。

男達から逃げるとき、ナイフで付けられたものだ。

リヴァイ
「…」

リヴァイは思わず、○○○の腕を強く握った。

○○○
「いっ…!」

リヴァイ
「!…悪い」

○○○
「…ううん」

気にしてないのに。

そう笑う○○○に、リヴァイの苦々しい顔をした。

リヴァイ
「…そういや、エルヴィンに」

○○○
「…まだ。今日ちゃんと」

ふ、とリヴァイは視線を上げる。

どうやら頃合のようだ。

リヴァイ
「ほら、便所で顔直して来い」

ハンジが戻ってきたのを見て、リヴァイは○○○の口元を親指で拭った。

○○○
「!」

○○○は口元をハンカチで押さえ、足早に屋内へと向かう。

ハンジは○○○とすれ違った。

とことこと、リヴァイの所へ歩いてくる。

ハンジ
「いいのかい?」

リヴァイ
「…何がだ」

ハンジが持ってきたワインを、リヴァイは受けとる。

ハンジ
「いや…。リヴァイ口元拭いた方がいい」

ハンジはちょんちょん、と自分の口元を指差した。

リヴァイ
「…」

リヴァイは黙って、自分の口元を手の甲で拭いた。

ハンジ
「あの子、この前エルヴィンの所に来ていた「小鳥ちゃん」だよね?」

リヴァイ
「…ああ」

ハンジ
「トップ同士の刃傷沙汰はごめんだよ?」

リヴァイはぐい、とワインをひと飲みした。

リヴァイ
「努力する」

ハンジ
「ど…」

リヴァイはハンジに開いたグラスを渡した。

ハンジ
「取り合えず…。エルヴィンと話した方が良いんじゃない?」

リヴァイ
「…だろうな」

ハンジ
「!」

リヴァイの視線の先。

エルヴィンが少し離れたところでガラス戸に寄りかかり、腕を組んでこちらを見ていた。

いつからそこに居たのだろう。

月の光が、より一層二人を際立たせていたように見えたのは、ハンジの気のせいだったろうか。



リヴァイはエルヴィンに近づく。

エルヴィン
「○○○の相手は、お前だったのか」

エルヴィンの声を聞いて、リヴァイの顔は険しくなる。

リヴァイ
「…てめえ、何考えてる」

エルヴィン
「…何の話だ?」

リヴァイ
「恍けやがって」

エルヴィンは笑う。

エルヴィン
「相手もわかったことだし、これからは正々堂々といこう」

リヴァイ
「おい」

エルヴィンはリヴァイを静止するように手をかざす。

エルヴィン
「少なくとも、ここでは私が彼女のパートナーだ」

そう言うと、エルヴィンはホールに入っていった。

リヴァイは険しい顔のままで居た。

エルヴィンが、今までこんなに女に入れ込んだことがあっただろうか。

リヴァイ
「…」


いつのまにか○○○はホールに戻っており、公爵の令嬢と話をしている。


そこにエルヴィンが入り、三人は朗らかに笑った。

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