Dream L
□more and more...
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結局、あれからエルヴィンもリヴァイも来なかった。
ずっと工房にいるわけにはいかないから、アパートメントに帰ってきていた。
○○○
(2週間、連絡無いって…)
きっと仕事が忙しくなったんだろう、とは思う。
自分で会いに行けば良いのだけれど。
○○○
「…」
作り終わった本を整理しながら、○○○は外を見た。
雨が降っている。
○○○
(今日は、お家でゆっくりしてよう)
お茶でも入れようかと思った時だった。
○○○
「エルヴィン」
玄関の外に立ったまま、フードを後ろに外したエルヴィンはびしょ濡れだ。
エルヴィン
「家に居てくれて良かった」
○○○
「拭く物を…」
エルヴィン
「ああ、いいよ。これを渡したくて」
エルヴィンは真っ白な封筒を懐から取り出した。
縁に金で蔓花が彩られており、ひと目で高級品だと分かる。
○○○
「これ…?」
エルヴィン
「招待状だよ。身内のパーティらしい」
○○○
「?」
エルヴィン
「ザクセン公に君の話をしたら、会ってみたいというんだ」
○○○
「!」
エルヴィン
「本の仕事もそうだけれど、同じ年頃の娘さんが君と話をしたいらしい。どうだい?」
○○○
「どう、って…」
エルヴィン
「悪くないだろう?」
○○○
「でも、マナーなんて知らないし、その…」
エルヴィンのパートナーになる資格なんて、自分には無い。
○○○
「あのね、エルヴィン」
エルヴィンの髪から、ぽたりと雫が落ちる。
○○○
「!」
○○○は慌てて、タオルを取ってきた。
エルヴィン
「ありがとう」
そう言って受け取って、エルヴィンは頭を拭いた。
○○○
「風邪、引いちゃうわ。中に」
エルヴィン
「いや、急ぐんだ」
エルヴィンはタオルをたたむと、顔を拭いた。
エルヴィン
「これはある意味、俺の仕事でもある。公には恩があってね。助けてくれないか?」
困ったような顔をして、エルヴィンは○○○を見る。
○○○
「…ずるい、わ。そんな言い方」
エルヴィン
「ははは、すまない。悪い癖だな」
○○○はひとつ、息を吐いた。
○○○
「…じゃあ、服を仕立てなくちゃね」
そう言うと、エルヴィンは○○○の頬にキスをした。
○○○
「!!」
驚いた顔をした○○○に、エルヴィンは「ああ、濡れてしまったね」なんて言いながら、○○○の顔をタオルで拭いた。
○○○
「えっ、と…」
そっと拭かれて、なんだか恥ずかしい。
エルヴィン
「ありがとう。仕立て屋なら、明日にでも来るように手配するよ」
○○○
「え?、だって」
エルヴィン
「無理を聞いてもらうんだ。ドレスぐらいプレゼントしないと」
○○○
「いいわよ、自分で」
エルヴィン
「じゃあ、急ぐから。タオルありがとう」
エルヴィンは○○○にタオルを渡すと、さっさと階段を下りていった。
○○○
(…押し切られちゃった)
○○○は封蠟で止められた封筒を開ける。
日時と場所が、書かれていた。
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