Dream L
□more and more...
2ページ/5ページ
森の中の、道を歩く。
ガタガタと荷馬車が○○○を追い抜いていった。
ふわ、と森が開ける。
○○○
「!」
工房の前に、見知った顔があった。
彼は○○○に気づくと、こちらを向いた。
エルヴィン
「○○○!」
夕日に照らされて、金色の髪が輝いていた。
○○○はゆっくりと、工房に近づく。
○○○
「どうして、ここが?」
エルヴィン
「ああ、大家さんに聞いてね」
○○○
「あ…」
エルヴィンは一度、○○○の家に泊まったことがある。
エルヴィン
「来ては、ダメだったかな?」
エルヴィンは少し顔を曇らせる。
それはどこか、子供が拗ねているようにも見えて。
○○○
「…ここは」
何と言っていいか分からずに、言葉を止める。
ここは父の工房だった。
恐らく、父が中央憲兵に連れて行かれたのもここだったのだろう。
久しぶりに○○○が来たとき、あちこち荒されていた。
正直、あまり人に知られたくない場所だ。
エルヴィン
「…君にも都合がある。突然来て、申し訳なかった」
先程の子供は形を潜め、いつものエルヴィンに戻る。
○○○
「ううん。…あ、本の続き、あったわ」
エルヴィン
「…そうか、ありがとう。ハンジも喜ぶよ」
○○○
「今持ってく?仮綴じなんだけど…。装丁すると、たぶん1ヶ月はかかっちゃうかも」
エルヴィンに持っていった本は、革の装丁がなされていた。
続きものなら、同じように仕上げたい。
同じ風合いの革を探すところから始めなくてはならないだろう。
でも。
本当に、今彼に伝えるべきことは…
エルヴィン
「そう、しようかな」
○○○
「待ってて」
そう言って、○○○は工房のドアを開ける。
○○○
(いつ、言おう…)
エルヴィン
「それにしても○○○、随分汚れているね」
○○○
「うん、ちょっとね」
地下街の『図書館』のことは何となく言い出せなかった。
○○○は背負っていたリュックを下ろす。
羽織っていたマントを脱ぐと、入り口脇の壁にあるコート掛けに掛けた。
エルヴィン
「!」
エルヴィンはある物に目を留めた。
○○○の白いうなじに、一片の花弁が。
○○○
「!」
振り向いた○○○は、壁とエルヴィンに挟まれた。
エルヴィンは壁に右肘を着いて、○○○に顔を寄せる。
つ、とエルヴィンの指が、○○○のキスマークをなぞる。
○○○
「んっ、な、に?」
エルヴィン
「…隠し事?」
そう言われて、どきりとした。
エルヴィンの顔は笑っているように見える、けど。
エルヴィン
「君は秘密が、多いね…」
○○○
「…?」
何だか、怖い。
エルヴィン
「…ああいった本を、どこから手に入れるんだ?」
本、と言われ、○○○は心なしかほっとした。
○○○
「…あなたも、私を捕まえるの?」
○○○の問いに、エルヴィンはゆっくり体を離した。
エルヴィン
「いや、怖がらせたならすまない。悪い輩に何かされてないか、心配になっただけだよ」
少し空気が和らいだ。
○○○
「そういうんじゃ無いわ。父の…」
エルヴィン
「お父さんの?」
そう言って、○○○はしまったと思う。
あの場所のことを、どう説明すれば…
○○○
「…倉庫、みたいな所があるのよ」
エルヴィン
「それは、どこに?」
○○○
「森、の中よ」
エルヴィン
「そうか…」
エルヴィンは何か考えているようだった。
○○○
「もう、いい?」
エルヴィン
「…ああ」
○○○はするりとそこを抜けると、奥に行って布を持ってきた。
リュックから仮綴じ本を取り出し、布で包む。
○○○
「はい」
それをエルヴィンに渡した。
エルヴィン
「ありがとう」
エルヴィンがいつも通りに笑う。
そのまま、○○○は彼を見送った。
○○○
「…!」
○○○は風呂場で、鏡を見て愕然とする。
○○○
「お、こるよね、これは…」
○○○の首筋には、赤いキスマークが付いていた。
ごし、と擦っても落ちやしない。
○○○
「…」
嬉しい、のと。
申し訳ない、のと。
何とも言えない気持ちで、シャワーを浴びた。
○○○
(明日、エルヴィンに必ず会いに行こう…)
○○○はそう思った。
だが翌日。
調査兵団の兵舎まで行ったのだが。
受付
「団長は調査で外出してます」
○○○
「いつ戻りますか?」
受付
「申し訳ありませんが、お教えできません」
○○○
「じゃあ、明日は?」
受付
「申し訳ありません」
○○○
「…分かりました。じゃあ、○○○が来た、とお伝えください」
兵舎を出ると、○○○は大きくため息を付いた。
避けられているのか、本当に忙しいのか。
○○○
(取り合えず、連絡を待とう)
リヴァイにも会いたかったけれど…
○○○
(けじめはつけないと)
○○○はうん、と背伸びをして、帰途に着いた。
.