Dream L
□Levi
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本を取りに行く。
それだけなのに、どうしてこんなに大変なのだろう。
○○○
(この道を通るのも、久しぶり…)
○○○は縄梯子を降り、古井戸の底に足を着けた。
溜まっていた湿った枯葉をぐしゃりと踏む。
上を見ると、空が井戸の縁で小さく丸く切り取られている。
○○○は前を向き、ガタン、と木の板を外す。
そこは明らかに、人の手が加えられている通路だった。
昨日、エルヴィンから頼まれた事があった。
先日○○○が持ってきた本の続きは無いか、という。
エルヴィン
「ハンジが気に入ったようでね」
○○○
「ああ、学者さん?」
以前話したときに、そんな事を言っていた気がする。
そう言うと、エルヴィンは笑った。
エルヴィン
「こういうのが好きなんだ」
○○○はエルヴィンに「本は探してみる」と返事をしていた。
あの本は父の持ち物だ。
正確には、父が「見つけたもの」、だが。
以前エルヴィンに見つかった青い革の本。
あれも、本当は同じ場所で父が見つけた物だ。
○○○
(家にも、工房にも無かったから…。後は、あそこしか)
ランプを手に、人ひとりが通れる通路を歩く。
茂った蔦を掻き分けて通路を抜ける。
○○○
「ふう」
ここは地下街だ。
○○○
(あまり、変わってない、ね)
体についた埃を払う。
ここは恐らく、地下街でも外れの方なのだろう。
以前と同じく、人の気配は無かった。
○○○
(さて…)
○○○はお目当ての所へと向かった。
廃墟の隙間を歩く。
壊れた石畳が折りたたまれるように積まれている道は、歩きにくいことこの上ない。
それでも小さな頃は、冒険が出来る、と喜んで歩いたものだった。
大きな、父の背を追いながら。
空が見える一角に出た。
恐らく、地上の建物ごと地下に落ち込んで来たのだろう。
天井が大きく抜けていた。
目前に広がる瓦礫の山の上に、○○○は立つ。
見下ろすと、半壊した建物があった。
○○○
(『図書館』、久しぶり…)
昔、父と「彼」はここを『図書館』と読んでいた。
実際は住居だったのか、倉庫だったのかもわからない。
○○○の父親は、良くここに来ては色々な物を漁っていた。
製本される前の本も、ここでは良く見つかった。
当時は色々な物が、手着かずのまま残されていた。
その一角。
「彼」はいつも石の階段の上に座り、本を読んでいた。
少し年上の、黒髪の男の子。
父とここに来ると、時折彼が居た。
彼曰く、ここは彼の縄張りなんだそうだ。
静かでいい、といつも言っていた。
○○○が名を尋ねると、地面に字を書いてくれた。
アルファベットを覚えたてだった○○○は、その名前を読むことが出来ず。
○○○
「える、いー、ぶい…」
男の子
「…」
○○○
「…もう!エル!あなたはエルよ!!」
そう言って癇癪を起こした○○○を、彼は笑って見ていたのだった。
この『図書館』は大好きで、怖くて、切なくて…
でも、やっぱり好きな場所だ。
○○○は空を見上げる。
ぽっかり開いた天井からは、キラキラと木々の葉から光が差し込んでいた。
○○○
(本の続き、ある、かな)
○○○が建物の中に入ろうとした時。
ゴト、と石がずれる様な音がした。
○○○
「!」
○○○が振り返ると。
『彼』が居た。
○○○
「…」
待ち伏せ、されていたのだろうか。
○○○
「…エル?」
エル。
そう呼ばれて、彼は○○○に一歩近づいた。
ぽん、と○○○の方に紙束を投げた。
○○○はそれを受け取る。
○○○
「これ…!」
○○○はぺら、とページを捲る。
エルヴィンから頼まれていた、本の続きだ。
○○○
「ど、して、あなたが…?」
リヴァイ
「…○○○」
○○○は、彼と最後に別れたときを思い出していた。
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