Dream L
□Erwin
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…数ヶ月前…
○○○
「これは、その、知らなかったんです!」
店主
「そう言われてもねえ」
○○○
「あの、もう返して下さい!!」
店主
「あのねえ、こっちにも一応義務ってもんが」
街なかの古本屋に持ってくるんじゃなかった。
○○○はそう思った。
休日の昼間に、騒ぎにはしたくない。
○○○
「見なかったことに!」
そう言って、○○○は店主が持っている本を取り返そうとした。
○○○
「!」
ひょい、と。
背の高い男が、本を取り上げた。
店主
「だ、だんな…!」
○○○
「…!」
エルヴィン
「外まで聞こえていたよ」
店主
「あ…、申し訳ありやせん」
エルヴィン
「いや、良いんだが…」
手に取った本を、彼はまじまじと見つめる。
本に詳しいのだろうか。
それは珍しく、青い革で装丁したものだ。
○○○
「ちょっと」
エルヴィン
「!、ああ、これは君のかい?」
○○○
「そうよ、返して。…!」
彼はお構いなしに、その本を開く。
エルヴィン
「これは…」
○○○
「!」
文字は読めないものの、様々な鳥や動物の絵が描かれている。
始めのページこそ見覚えがある物が載っていたが、後ろに行くにつれ見たことが無いものになって行った。
大きな首の長い鳥や鼻の長い獣、だろうかも描かれている。
○○○
「ちょ、やめて!」
構わず彼はページを開く。
次に開いたページには、地図のようなものが描かれていた。
破れた所を修復したのだろうか、所々白紙ではあるが…
エルヴィン
(少なくとも、壁内にこの様な土地は無い…)
店主を見ると、苦い顔をしている。
エルヴィン
「…これは?」
彼は店主に聞く。
店主はしぶしぶ答えた。
店主
「いわゆる、禁書ってやつでさぁ」
○○○
「ちょっ!何てこと言うのよ!」
店主
「馬鹿!この人は調査兵団の団長だ」
○○○
「!!」
○○○の顔が一気に青ざめた。
エルヴィン
「君、これはどこで?」
○○○
「…」
店主
「悪い娘じゃ無いんです!きっと騙されたんで」
その哀れな店主の声に、彼はため息をついた。
○○○
「…。知らない男が、置いてったのよ」
エルヴィン
「置いて…?」
ぐううう。と突然音が響く。
○○○
「!!」
○○○はお腹を押さえた。
なんで、こんな時に!
店主は大きく咳払いをした。
店主
「○○○は、本の装丁屋で」
彼はほう、と感心した声を上げた。
○○○
「文字はわからなかったけど、絵が綺麗だったから…。てっきり、子供用の絵本かと思ったの」
確かに、その本は珍しく色彩が施され、生き物の特徴が丁寧に描かれている。
エルヴィン
「勝手に人の物を売ったりしたら…」
○○○
「言ったでしょ、置いていった、って。引越しとかで邪魔になったのとかを、もって来る人が居るのよ」
エルヴィンはふむ、と唸る。
店長
「…だんなぁ」
への字眉になった店主を見て、彼は笑った。
エルヴィン
「大丈夫だよ、悪いようにはしない」
そう言うと、彼は改まって○○○に向き直った。
エルヴィン
「私はエルヴィン。君は○○○さん、かな?」
○○○
「そうよ」
エルヴィン
「少し、話を聞きたいんだが、時間はあるかい?」
○○○
「時間なんて…」
ぐうううう。と、また。
また顔を赤くした○○○に、エルヴィンは笑いかけた。
エルヴィン
「お昼をごちそうしよう。その位の時間ならあるだろう?」
ひらひらと手にある本をチラつかされて、○○○は頷くしかなかった。
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