Dream S
□初夏
1ページ/1ページ
○○○は昼食を終え、兵舎の近くの丘に向かう。
午後は待機だ。
○○○
(少し、気晴らしをしてもいいよね)
草を踏みしだき、丘の上の大きな木の側に来た。
辺りを見渡しても誰も居ない。
○○○
(気持ちいい…!)
むせ返るような、夏草の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
うん、と一つ背伸びをすると、自然と歌が口を着いて出た。
前髪の奥から そっと覗いて
気づかれぬ様に 私を見る
少し笑って 照れながらくれる
君のまなざしは 深い海に似て
私を包む
遠く広がる 目の前の景色
教えてくれた 瞳に映して
途切れがち零れる 君の言葉
物語りの様に 私を読む
ひと言 ひと言 透き通る私
耳を傾けて 瞬きする度
心は晴れてく
遠く続く 歩きたくなる径
教えてくれた 微笑みに乗せて
いつだったか。
誰かに教わったこの歌。
○○○
(まるで、兵長の事みたい…)
私を導いてくれる、光。
頭を撫でてくれた手は、とても力強くて。
掛けてくれた声は、とても優しくて。
○○○
(好きになら無い方が、難しい…)
ザ、と葉が大きく揺れる音がして、目の前に大きな影が落ちてきた。
○○○
「!」
敵か、と思って身構えると、それはマントを羽織ったリヴァイで。
○○○
「!?えっ、なんで…?」
リヴァイ
「おい」
○○○
「っ、はいっ!」
リヴァイ
「そこに座れ」
○○○
「!?」
リヴァイ
「聞こえなかったのか」
○○○
「!」
私は慌てて座る。
一体何が起こってるの??
リヴァイ
「足、伸ばせ」
○○○
「え…?」
ち、と舌打ちをされて、私は慌てて足を伸ばした。
○○○
(!!!、へ、兵長の頭が私のふ、ふ、太ももにっ…!!)
ごろりと寝転がったリヴァイは、○○○の太ももを枕にして目を閉じた。
リヴァイ
「昼寝してたら、お前の歌で目が覚めた」
○○○
「あ、す、すみません…」
リヴァイ
「暫くこうしていろ」
○○○
「は、い…」
リヴァイ
「…」
○○○
「…」
本当に、しばらく寝るのかな。
木に寄りかかり、葉の隙間から空を眺めた。
柔らかい風が、甘いくちなしの香りを運んでくる。
○○○
(ねむ…)
色々もう考えるのを止めよう。
○○○
(たまには、こういう時も…)
うとうとし始めた私に、兵長が笑ったような気がした。
end