Dream S

□Old santa
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パタパタと走る足音が聞こえる。

バタン、と大きくドアが開いた。

○○○
「兵長!どうして誕生日の事教えてくれなかったんですか!」

リヴァイ
「…ノックぐらいしろ」

○○○
「兵長!」

リヴァイは大きくため息を付いて、確認していた書類を机に置いた。

リヴァイ
「その誕生日は便宜上のものだ」

○○○
「…便宜上?」

リヴァイ
「ああ…」

リヴァイはある冬の出来事を思い出していた。





地下街には雪は無い。

それでも冬はかなり冷え込み、燃料の奪い合いで死人が出るほどだった。

リヴァイ
「…」

夜も更けて、リヴァイは薪を暖炉にくべる。


去年までは、少ない薪で何とか過ごしていた。

母と同じ布団で眠っても、寒くて眠れない日もあった。

だが、母の居なくなった今は。

リヴァイ
(クソケニー、遅せえ…)

今は家に一冬越すには十分な薪や灯油が置かれ、保存が利く食料もある。

ケニーが時折どこからか調達してくるのだ。

リヴァイはため息を付いて、布団にもぐった。



リヴァイ
「ん…?」

ケニー
「!、こういう時は寝たフリしとけよ…」

人の気配を感じ、目を開いたらケニーが居た。

ケニーは何かカラフルな袋を持っている。

リヴァイは体を起こすと、目を擦った。

ケニー
「いい、いい。眠ってろ。これは明日開けるんだぞ」

リヴァイ
「これ、何だ?」

ケニー
「ああ?見りゃ分かるだろ、プレゼントだよ」

リヴァイ
「プレゼント?」

ケニー
「ああ」

リヴァイ
「なんで?」

ケニー
「何でって…」

ケニーはがりがりと頭を掻いた。

リヴァイ
「…俺のタンジョウビ、とかいうやつか?」

リヴァイは、先日教会の神父が言っていた事を思い出した。


子供であるリヴァイは、ケニーが居ない日中、教会に預けられることが多かった。

そこでは文字や計算を教えてもらい、食事も与えられた。

こんな所があるのか、と初めて来た時リヴァイは思ったものである。

知っていれば、母は死なずに済んだかも知れないとも。


そこで得た知識のひとつ。

明日は何とかという聖人の、タンジョウビらしい。

教会に来る人間は、そのお祝いをするんだとか。

リヴァイにとって、タンジョウビとはお祝いをしてもらえる日、とインプットされたのだった。


ケニーはうーんと唸っている。

ケニー
「そうだな!お前の誕生日だ!」

リヴァイ
「!」

ケニー
(生まれた年は分かるが、日にちまでは正直覚えてねえ…)

リヴァイ
「そ、か…」

リヴァイはその袋を見つめた。

ケニー
「ま、あれだな。街中がお前の誕生日を祝ってくれてるみたいで良いシーズンだよな!」

リヴァイ
「…」

慌てるケニーに少々不信感を覚えながら、リヴァイはその袋を抱いて眠った。






リヴァイはふ、と息を吐いて立ち上がる。

リヴァイ
「一息入れる。座れ」

○○○
「あ!お茶なら私が」

リヴァイ
「いい。座ってろ」

リヴァイはお茶の準備をしながら話す。

○○○はその背中を見ていた。

リヴァイ
「以前一緒に暮らしていたやつがいた。その話はしたな?」

○○○
「はい」

リヴァイ
「そいつが言うには、12月25日が俺の誕生日だ、ということだ」

○○○
「…」

リヴァイ
「ただ、それが本当かどうか、確かめようがない」

○○○
「え?」

リヴァイはトレーに紅茶を二つ乗せてきた。

カチャ、と○○○の前に置く。

リヴァイ
「正直に言えば、俺は自分の歳すら知らない」

○○○
「!」

リヴァイは○○○の隣に座った。

ふわん、とソファが揺れる。

リヴァイ
「まあ、今まで困ったことは…ここに入る時位なものか」

○○○
「…」

リヴァイ
「…気味が悪いか」

○○○
「!いえ、そんなっ」

リヴァイ
「いい。それが普通の反応だ」

リヴァイはそう言って、紅茶を口にした。

○○○
「…」

リヴァイ
「!、おい、溢すだろうが」

リヴァイが紅茶を置くやいなや、○○○はリヴァイに抱きついた。

リヴァイ
「…どうした」

○○○
「…」

リヴァイ
「○○○?」

○○○は黙って、リヴァイを抱きしめている。

リヴァイは肩の力を抜いた。

リヴァイ
「…おい、○○○。顔を見せろ」

○○○はリヴァイの首筋で、首を横に振った。

リヴァイ
「くすぐってえ。早くしろ」

○○○
「…」

リヴァイ
「紅茶が冷める」

○○○
「!」

○○○はリヴァイから勢いよく体を離すと、紅茶を手に取り、それを一気に飲み干した。

リヴァイ
「おい」

○○○
「あ、っつ」

リヴァイ
「馬鹿、口を見せろ」

リヴァイは○○○の顎を掴み、顔をこちらに向けさせる。

リヴァイ
「!」

見ると、まるで泣き出しそうな顔をしている。

舌の痛みのせいか、それとも先程の話のせいか。

リヴァイ
「口を開けろ」

○○○は素直にそれに従った。

リヴァイ
(…少々、赤い、か?)

○○○
「…?」

リヴァイ
「…」

○○○
「!」

唐突に、リヴァイの唇が○○○の口に触れる。

○○○
「んっ、ふ…」

ねっとりと舌を舐め取られ、○○○は震えた。

○○○
「ん、んんっ」

何度も何度も、それは繰り返され。

それはまるで、あの時の行為の様な。

○○○
「ふ、ぁん」

次第に熱がこもり始めた頃。

ゆっくりとした動きで、リヴァイの唇は離れていった。

リヴァイ
「…大丈夫そうだな」

○○○
「えっ、あ、…はい」

リヴァイはどこか満足げな顔をして笑う。

そして顔を赤くしている○○○の口元を、親指で拭った。

リヴァイ
「祝ってくれるのか」

○○○
「?」

リヴァイ
「誕生日」

○○○
「!、もちろんですっ!」

○○○が詰め寄ると、リヴァイはまた笑って。

リヴァイ
「期待している」

そう言うと自分の紅茶に手を伸ばし、それを口に含んだ。


○○○
(近づいては、遠ざかるような…)

リヴァイを知れば知るほど、その存在を遠く感じる時がある。

リヴァイはふ、と○○○の方に視線を向けた。

リヴァイ
「そんな顔をするな。仕事中だ」

○○○
「?」

リヴァイ
「続きがしたいなら、夜に来い」

○○○
「!」

言われて真っ赤になった○○○に、リヴァイはまた愉快そうに笑った。


end

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