Dream S
□アドベント
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リヴァイは○○○と、仕事を早めに片付けて街に出てきていた。
○○○
「わあ!」
大きな通りに、クリスマスマーケットが開かれている。
きらびやかな飾りと、美味しそうな香り。
この時期にしか見られない光景だ。
○○○
「兵長!」
○○○は少し向こうで、リヴァイに向かって手を振っている。
リヴァイ
「!」
○○○は何かに気を取られ、人ごみに消えていった。
見回すと、その姿を見つける。
店の前で小さなクリスマスツリーを眺めている。
リヴァイはため息を付くと、○○○の傍に寄った。
リヴァイ
「少しは落ち着け」
○○○
「これ、お部屋に飾りませんか?」
リヴァイ
「…俺のか?」
○○○
「はいっ!あっ、あっち行きましょう!」
○○○はリヴァイの手を引いて、通りの向こうの店に行く。
リヴァイ
「…」
今日の約束をしてからというもの、○○○はずっと落ち着きが無かった。
リヴァイ
(何が、そんなに…)
○○○
「兵長は、何色が好きですか?」
リヴァイ
「色?」
見ると、そこは飲み物を出す店のようだ。
店の後ろの棚に、色とりどりのマグカップが並ぶ。
カップには、クリスマスをモチーフとした絵が描かれている。
リヴァイ
「お前の好きなのを選べ」
○○○
「良いんですか?」
リヴァイ
「ああ…」
○○○
「じゃあ、赤と緑、ひとつずつ!」
店の親父は笑って、大きな鍋に入った飲み物をコップに取り分けた。
リヴァイ
「これは?」
○○○
「グリューワインです」
リヴァイが受け取ったのは、温かい飲み物だ。
リヴァイ
「ワイン?」
○○○
「はい。ワインに果物や香辛料を入れて温めたもので、この時期の名物なんですよ」
リヴァイ
「ほう」
確かに、ぶどうの香りがほんわりと香る。
○○○
「カップが毎年変わるんです。だから、記念にもなるんです」
○○○が指差した所を見ると、年号が描かれていた。
リヴァイはカップに口をつける。
ふわ、と柔らかい香りが鼻腔をくすぐる。
リヴァイ
「…甘いな」
○○○
「でも、温まります」
○○○も笑って、それを口に含んだ。
グリューワインを飲みながら、マーケットの中を歩く。
○○○
「あ!あれ買いたいです」
○○○が指差したのは、カレンダーのようなものだった。
リヴァイ
「カレンダーなら、部屋にあるだろう」
○○○
「これは、アドベントカレンダーです」
リヴァイ
「アド…?」
○○○
「25日までの間、ひとつずつこの箱を開けて行くんです」
箱型のカレンダーは日付毎に分けられており、中に何か入っているようだ。
○○○
「ツリーの飾りだったり、お菓子だったり。色々入ってるんですよ」
リヴァイ
「ほう」
店を見ると、星の形や、サンタの形をしたもの。
様々な形のアドベントカレンダーが並んでいる。
○○○
「どれにしようかな…。兵長は、どれが良いですか?」
リヴァイ
「…その、赤いのは」
何がいいのか良く分からなかったが、取りあえず目に留まったものを言ってみた。
○○○
「あ、これお菓子のやつですね」
これにしよう、そうつぶやくと、○○○はそれを店員に渡した。
○○○
「25日、楽しみだなあ…」
袋を抱え、○○○は幸せそうに微笑む。
リヴァイ
「…」
○○○
「兵長は、楽しみじゃないんですか?」
リヴァイ
「いままで、あまりこうした事はしてこなかったからな…」
特段興味は無かったし、それ所じゃ無かったのもある。
○○○
「私は、楽しみです」
リヴァイ
「…そうか」
○○○
「兵長の、誕生日だから」
リヴァイ
「…!」
○○○は照れたように、ふふ、と笑った。
日はもう沈み、街中のライトが輝きを増している。
飲み終わったマグカップは袋に居れ、二人で歩く。
○○○
「…」
○○○はそっと、リヴァイの肘に手を掛ける。
腕を組んでも、リヴァイは特に振り払うでも無かった。
リヴァイ
「…○○○」
不意に名を呼ばれて、○○○はリヴァイを見る。
○○○
「…?」
リヴァイはとても優しい顔をしていて。
リヴァイ
「…」
○○○
「…!」
リヴァイは組んでいた○○○の手に、そっと触れた。
後日、リヴァイの執務室のテーブルに、小さなツリーが置かれていた。
end
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