Dream S
□みかん
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○○○
「あれ?」
リヴァイの返事があったので室内に入ると、ハンジがそこに居た。
リヴァイ
「ほら、もう帰れ」
ハンジ
「後もうひとつだけ!この検証なんだけど…」
二人で机を差し挟んで、何やら書類を見つめている。
論文か?
○○○
「後にした方がいい?」
リヴァイ
「いや、もう終わる。昼からずっとだ」
時計を見るともう3時。
リヴァイを見ると、相当うんざりとした顔をしていた。
○○○
「ま、一息ついたら?」
○○○は持ってきたものを見せる。
ハンジ
「それはオレンジかい?」
○○○
「みかん、だよ。田舎から送ってきた」
○○○はみかんをハンジに投げてやった。
ハンジ
「ふうん。確かにオレンジより小ぶりだね」
○○○
「オレンジは、ナイフを使った方が皮をむき易いけど」
○○○はみかんの入った袋をテーブルに置き、中からひとつを取り出す。
むいてみせると、ハンジは同じようにやり始めた。
ハンジ
「力加減が、難しい…」
手が汁でべたべたになっていた。
リヴァイ
「ハンジ、手を服で拭くな」
○○○
「あはは。何個かむけば慣れるよ。ほら」
○○○はポケットのハンカチをハンジに投げてやった。
ハンジ
「ありがと。ふむ。このまま食べていいのかな?」
○○○
「こうして…。ひと房ごとにした方が食べ易いよ」
○○○はみかんをひと房外すと、リヴァイの口に添える。
ハンジ
「!」
それは、とても自然にリヴァイの口の中に消えていった。
○○○
「ハンジ?」
ハンジ
「あ、いや。こうだね。むぐ。甘い!」
リヴァイ
「しゃべんな!汁が飛ぶ」
○○○
「わはは」
○○○は笑いながら、自分でもみかんを食べ、時折リヴァイの口に運ぶ。
ハンジ
(この二人って…)
先日の壁外から、リヴァイ班に抜擢された○○○。
そつなく仕事をこなすタイプで、あまりリヴァイとは関わりが無さそうだと思っていたけれど。
ハンジ
(なるほど、これはどうして)
○○○
「もう一個要る?」
ハンジ
「貰う!ね、リヴァイ。あなたは何で自分で剥かないの?」
○○○
「ああ、手に汁が付くのが嫌なんだって」
ハンジ
「むくの下手なんだ」
○○○
「そうとも…」
リヴァイ
「そろそろ休憩は終わりだ。さっさと続きをするぞ」
リヴァイのその態度に、○○○とハンジは笑う。
まだ二人が話しているので、○○○は窓辺に来た。
○○○
(長くなりそうだな。あ…)
ちょっと面白いことを思いついた。
ハンジなら、喜びそうだ。
そう思い、○○○は作業をし始めた。
ハンジ
「そういう展開でまとめるか…」
リヴァイ
「…もういいだろ」
○○○
「ね、二人とも、ちょっと見て?」
○○○が掲げたのは、真っ白な紙だ。
リヴァイ
「…」
ハンジ
「ん?それが?」
○○○
「見ててね」
○○○は持っていたランプのカバーを外し、ろうそくの炎で紙を炙る。
ハンジ
「!」
とある部分が、黒く浮かび上がってきた。
よく見ると、ハートが描かれている。
ハンジ
「○○○!これ、どういう…?」
ハンジの目が爛々としている。
○○○
「理屈は知らないけど。みかんの汁で文字を書いたところが、こうして炙ると浮かび上がってくるんだ」
ハンジ
「!」
ハンジは○○○の持っていた紙を奪うようにして取った。
ハンジ
「…何かに応用できるかも。○○○、みかん貰っていっていい?」
○○○
「全部いいよ。まだあるし」
ハンジ
「ありがとう!じゃね、リヴァイ!」
ハンジは書類をかき集め、みかんの袋を手に取るといそいそと部屋を出て行った。
バタン、とドアが閉まる。
○○○
「成功♪」
○○○はバイバイと閉まったドアに手を振りながらそう言った。
リヴァイはどっかりとソファに座り直した。
○○○
「…お疲れ様」
リヴァイ
「ああ」
○○○
「紅茶入れる?」
リヴァイ
「いや」
手招きされ、○○○はリヴァイの隣に座る。
○○○はリヴァイの頬に手をやった。
リヴァイ
「みかん臭え」
○○○
「はは、そうだろうね。…全部持っていかれちゃった」
リヴァイ
「?」
○○○
「あなたに、みかん入りの紅茶を作ろうと思ってたのに」
リヴァイ
「…次でいいだろ」
○○○
「…じゃあ、今は?」
リヴァイ
「とりあえず…」
○○○はリヴァイと、キスをした。
end