Dream L
□Levi
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○○○
(息、が、出来な…)
耳元でごうごうと酷い音がする。
風だ。
○○○
(手が、すべるっ)
風圧に押されて、体が滑り落ちそうで怖い。
○○○は必死に、彼にしがみ付いていた。
それでも何とかなっていたのは。
腰に回された彼の腕が、しっかりと○○○を支えていたからだった。
ふわり、と一瞬風の力と音が止む。
○○○は大きく息を吸った。
気づくと体は真横になっており、ぐん、と彼が壁を蹴る。
○○○
「!!」
また背中からの圧迫と、風の音が聞こえた。
いくつか壁を蹴り、彼は高い建物の天辺に降り立った。
○○○
「…」
リヴァイ
「○○○…?」
心配そうに名を呼ばれた。
ガシャン、と機械音がして、彼は○○○の背に手を回す。
○○○
「…っ!」
リヴァイ
「?」
○○○
「っっごいね!!!」
そう言って、がばり、と○○○は彼から体を離し、肩を揺すった。
○○○
「空飛んだよね?今!!びゅんって、ふわって!!!」
彼の口元が、緩んだような気がした。
○○○
「凄いねえ…!…あっ」
そう言って、○○○は背負っていたリュックを開ける。
○○○
「…良かった」
それはエルヴィンに頼まれていた本だ。
仮綴じのため、端が少し折れてしまった。
きちんと直さなくては。
リヴァイ
「…親父さんの後、継いだのか?」
○○○
「ん…」
○○○は本を仕舞うと、顔を上げる。
○○○
「…成り行き、かな。ほかに出来ることも無いし」
リヴァイ
「親父さん、どうしてる?」
○○○の顔が、曇る。
○○○はひとつ息を吐くと、意を決したようにして言った。
○○○
「憲兵に、連れて行かれた」
その服の模様は憲兵だと、後でエルヴィンが教えてくれていた。
リヴァイ
「…そうか」
○○○
「…こんなの、扱ってちゃね」
これもきっと、危うい内容の本だ。
リヴァイ
「…」
○○○
「でも大丈夫よ。エルヴィンが助けて、くれ、て…」
リヴァイとエルヴィンの関係性が良くわからなくて、○○○は話すのを止めた。
○○○
「…エル」
リヴァイ
「ん?」
○○○
「あなたの名前、ハンジっていうの?」
リヴァイ
「ああ?」
○○○
「ちょ、怖い。顔」
リヴァイ
「…どうしてそう思う」
○○○
「だって、これ…」
そう言って、○○○は紙束を見せる。
エルヴィンは、ハンジが欲しがったと言っていた。
リヴァイ
「ああ…。俺がハンジに頼んだ」
○○○
「…そう」
どうやらそのハンジという人は、リヴァイとも知り合いらしい。
○○○
「あの、エルはエルヴィンと知り合いなの?」
彼は少し考えて、答えた。
リヴァイ
「まあ、便宜上上司と部下だな」
○○○
「!、そ、か…」
リヴァイ
「で、お前はエルヴィンとはどうなんだ?」
○○○
「!、どうって…」
○○○がどう答えればいいか考えていると。
○○○
「!」
ぽん、と彼は○○○の頭に手を乗せた。
わしわしと、手を動かす。
リヴァイ
「…お前が幸せなら、それで良い」
するり、とその手は外れ、彼は向こうを向く。
どうやって帰るかを考え始めているようだ。
○○○
「…っ」
○○○はその背に向かって。
○○○
「わ、たしはエルが好き!」
リヴァイ
「…」
彼はゆっくりと○○○に向き直す。
ため息をついて、もう一度○○○の頭に手を置いた。
リヴァイ
「…お前はどうしたい」
○○○
「…エルヴィンに、ちゃんと話す」
少しの沈黙の後。
リヴァイ
「分かった。ただ…」
○○○
「!」
○○○の首筋に彼が顔を寄せる。
○○○
「んっ」
リヴァイ
「…待たせるなよ」
○○○の耳元で、そう囁いた。
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