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□煉獄 杏寿郎
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「ここまで来ると最早芸術だね」
「…ほう?」
私の嫌味に珍しく怒っているみたいだが、何も怖くはないのだよ杏寿郎さん。
何故なら悪いのは杏寿郎さんだし怒られる謂れはないからだ。
「そんな怒らないでよ」
口を尖らせてむすっとしている杏寿郎さんの眉間の皺をぐりぐりと広げる。
そんな行動すら煩わしいのか背けられる顔を無理やり私を見るように両頬に手を添えて戻せば、更に眉間の皺を深くさせていく。
ああ、私は幸せ者だなぁ。
「…何を笑ってるんだ」
不服だよね。分かるよ。
頑張った結果がこんなぐちゃぐちゃになった挙句、私に笑われてしまってるんだものね。
でもそんな所も愛おしいと思ってしまう私の気持ちも分かってほしいな。
「杏寿郎さんに愛されてるなぁって分かるから幸せに思ってるの」
そう言えば少し柔らかくなった表情で唇を寄せてくれる貴方のことを嫌いになんてなるわけないよ。
でもリベンジしたけどダメだったおにぎり、一緒に食べてね。
2021.01.07