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□煉獄 杏寿郎
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キラキラとしている。すごい。
テレビの中だけだと思っていたそれは現実でもちゃんとキラキラしていた。
見た目は大丈夫そうだったから安心しきっていたのかもしれない。
最近は共に料理をすることが増え、色んなことを彼に教えてもいたし、マニュアルさえ作ればなんとかなっていたのだ。
まさかそんなことはしないだろうとタカを括っていた私が悪かった。
一言注意書きを添えていればこんなことにはならなかったはずだったのに、それを怠った私が悪い。
水をコップのギリギリまで入れて慎重に持ってきている彼が見える。
悪いことをしてしまった。あれだけ吐くまいと決めていたのに胃から込み上げてくるものを抑えきれなかった。
優しく摩ってくれる手の温かさが辛く感じる。
「袋を持ってきたぞ」
「ごめんね…気を遣わせちゃって…」
「いや…俺が悪い。すまない。
まさか料理でこんなことになるとは…」
最近しょんぼりさせてしまうことが増えた気がする。
「…あの」
「…ああ」
「アレンジをしようとしたのね」
メシマズの基本は無駄なアレンジだ。
そして今回私が悪いと感じたのは、きっとこのレシピを書いてる時にアレを入れると美味しくなるんだよなあ、と一言が口から出てしまったせいだ。
そして彼は間違えたのだ。入れるべきものの名前が似ているせいで間違ったものを買って、間違ったものを美味しくなると信じたのだ。
私のために作ってくれたんだものね。
それは素直に嬉しいし、彼の手料理を食べてみたい私の気持ちを優先した結果がこれだ。
でも一言言わせてほしい。
とびきりの笑顔を向けると、とびきりの笑顔を返してもらえる。
その笑顔があれば大丈夫だな!うん!
「杏寿郎さん、お願いがあるの」
「断る!」
「却下!あなたも食べて!」
増えた洗濯物を洗濯機にぶち込み、仲良く2人でお風呂に入った。
2021.01.04