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□アラジン
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「どうしても、行ってしまうの?」

「うん」



わたしの目を見て、はっきりとそう言った。
そんなアラジンが私はとても好きだった。

「僕には、知らなきゃいけない事がたくさんあるのさ」


ああ。
わたしを置いて、どこかに行ってしまう。
この笑顔も、言葉も、わたしだけのものではなかった。
分かってはいたけれど、理解してはいたけれど、ひどく悲しい。


「もう会えないわけじゃないよ」



だから泣かないでおくれ。
だめよ。わたしには耐えられない。
わたしの友達なんだもの。
大事な、大事な友達なんだもの。
どうして一緒じゃいけないの。

大声で泣いて、泣いて泣いて。
彼に行かないでと縋る。

眉を八の字して笑うのを見て、焦る。
違うの、そんな顔をしてほしいわけじゃないの。
ごめんなさい、ごめんなさい。

「また…また会えるの…?」

「もちろんさ!僕は必ず、サキを迎えに来るよ」

「絶対だよ、わたしのこと、迎えに来てね…?」

「うん!約束!」


差し出された指に、わたしの小指を絡ませる。
お互いに少しだけ力を入れたあと、ゆっくりと額が合わさる。

「サキ」

「うん」

「待っててくれるかい?」

「うん、待ってる」


かかる息が、サラッと流れるアラジンの前髪が、とてもくすぐったくて。

悪戯に鼻をぶつけてみたり。

目を合わせて、笑い合ってみたり。

指を離して手を繋いでみたり。



「大好きよ、アラジン」



手を離して、確かめてみたり。


「僕も、サキが大好きさ」




扉を開いて、外に向かうあなたに。
また会えると信じて、大きく手を振る。
閉まっていく扉の間から、笑顔で手を振り返してくれるあなたがまだ見える内は、笑顔でいよう。
安心して外の世界に行けるように。




(大丈夫よ、寂しくないわ)
(ウーゴと待ってるから、だから、)
(アラジンもどうか、寂しがらないで)


2016/06/10


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