荒波一期(仮)

□メイド騒動
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ところ変わって帝国学園のグラウンド。今日も帝国イレブンは練習をしているが、今は休憩をとっていた。



「土門か……?」



携帯が着信しているのに気がついた鬼道は、今日は雷門中の準決勝だったことを思い出しつつ携帯を開く。

そこには、お裾分けです、という文と添付ファイル。



「(何を送ってきたんだ?)」



嫌な予感がするような、しないような。それでも好奇心を押さえられずににファイルを開き……パタン、と携帯を閉じた。



「(今のは一体……)」



顔を赤らめて、若干涙目になっているメイド服の美波の写真を、鬼道の目は確かに捉えていた。

確か準決勝の相手は秋葉名戸。そしてマネージャーは対戦校もメイド服を着なければならないという決まりがある。



「(だから佐久間に落ち着きがなかったのか……)」



携帯片手にそわそわと落ち着きのない様子の佐久間に、鬼道はため息をついた。

なるほど、今日の佐久間の調子がやけによかったのは、そういうことかと納得する。

……頭痛までしてきたのは気のせいだと思いたい。

というかアイツはマネージャーではないはずだが……、上手く丸め込まれたのだろう。



「佐久間」

「な、何だ!」



わかりやすぎやしないか。



「……いや、なんでもない」



でももう少し隠す努力をして欲しい。

携帯の画面を見つめる佐久間の目には熱が籠っており、これまた分かりやすい。

それを見ながら本格的に痛くなってきた頭を押さえつつも、どこか不快に思えた。

再び携帯を開けば例の写真。さて、どうしたものか。



「……」



気づけば指を動かしていて、画面には保存しましたの文字。



「……」



もう一度写真を出し、それを見つめると待ち受けに設定した。そしてメールを削除する。



「(俺は……)」



無意識のうちに美波のことを意識してしまっている。

その思いを振り払うかのように軽く首を振り、未だに携帯の画面を食い入るように見ている佐久間に改めて声をかける。

そしてマントを翻しながら、鬼道はグラウンドへと戻った。



「練習を再開するぞ!」







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