受験生!

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「……なまえさん?」

「あ、征十郎君。久しぶりだね」

「お久しぶりです」



道端でばったりと再会して軽く頭を下げてきたのは、小学校時代よく可愛がっていた赤司征十郎君だった。

所謂兄弟学年というやつで、最初は低学年にも関わらず、その達観した思考に呆然としたっけ。

なんだかんだで仲良くなって、なまえちゃんなんて呼んでくれてたけど、今はもうその面影は見られない。

もう"征十郎君"呼びはアウトかな。ああでも、「変に気を使わないで下さい」って呼び方を変えようとした時言われたな。やめとこ。

改めて征十郎君を見る。身長もすっかりあたしを越してしまい、体つきもいくばくか華奢なものの、完全に男の子だ。

声だって低くなったし、顔もキリッとしていて可愛いから格好いいになった。頭も良かった筈だし、モテるんだろうなあ。



「やっぱりモテるの?」

「……何故そうなったのか分からないのですが」

「ごめん」

「いえ。何度か告白を受けたことはありましたが、好きな人はいるので」

「え、いるんだ」



意外だ。風の噂でバスケやってるって聞いてたし、彼は恋愛なんかにはまだ興味がないと思っていた。……偏見か。

そもそも征十郎君なら、勉強も部活も恋愛も、全て両立させるだろう。これは偏見ではなく、確信。



「今年高校受験だっけ」

「はい。なまえさんは大学受験でしたね」

「まあね。どこ行くの?」

「洛山高校です」

「洛山っていうと、京都のバスケの強豪校か……。偏差値も高いし、征十郎君にはぴったりだね」

「僕がバスケをやっているの、知っていたんですね」

「風の噂で聞きまして」



それにしても、一人称も僕になったのか。小学生の時はオレだったのに。本当に大きくなった。



「京都まで行っちゃうんだ」

「なまえさんは東京の大学に進学するんですよね」

「まあね。推薦取れそうだし」



それでも油断は禁物だ。受かったのが完全に確定するまで、気を抜くことは出来ない。



「僕は大学はこちらに戻ってくるつもりです」

「ん?うん」

「なまえさんと同じところに行きますから」

「……」

「絶対に、待っていて下さい」



それでは、と会釈をした征十郎君は去っていった。敬語だし年下なのに有無を言わせぬ迫力に、少し驚いた。



「今時の子はマセてんなあ……」



白い息を吐き出して、私は再び歩き出した。





***
受験生あんま関係ない件。
征十郎君は本人に聞いてない癖に、どこの大学に行くのか知っている。

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