受験生!
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横を見れば、女子メンバーがこたつで雑誌を見ながら談笑していた。
窓の外を見れば、男子メンバーがサッカーをしていた。
「……うあああああ!」
そう叫んで、あたしは過去問の冊子を投げ飛ばした。もう我慢ならない。少しは休みたい!
「サッカーやりたいいいい!もしくは!玲名たちとお喋りしたい!」
「ダメだよ。わざわざ俺が教えてるんだし」
「いやあたし頼んでないから」
「模試の結果、忘れたの?」
「うっ」
「今まで勉強サボって遊んでたのはなまえなんだからね」
「ごもっともです」
にこやかに微笑みながらも、黒い何かが滲み出ているヒロトにそう返答すると、冊子を拾い上げる。
「なんならこの前の模試の結果、もう一度見る?」と言われ、潔く机の前に座り直した。
FFIに日本代表として出場し、優勝。しかも頭がいいときた。そんなヒロトは既に、推薦で進学先を決めている。
その高校はサッカー部が強いらしく、リュウジや晴矢、風介もそこの推薦をとった。
リュウジはともかく、晴矢と風介はヒロトとは別の高校に行くと思ってたんだけどな……。晴矢は学力的にも。
結局ライバル視してるヒロトに泣きついて、風介に鼻で笑われるのしか想像出来ない。
……ていうか、
「あたしこんなに勉強しなくても大丈夫だと思うんだけど」
「そうかな?」
「そうだよ」
中学で配布されたワークの解き直し2回に、国語以外の教科書の内容をノートに纏める。
国語に関しては、漢字を絶対に落とさないように新しく問題集を買った。
それから、過去5年分の公立の過去問を3周して、ただいま4周目に突入。
あたしが行きたい高校は、ここまで勉強しなくても受かる筈だ。偏差値もそんなに高くはないし。
「まあ、ヒロトたちと同じ高校行くなら別だけどさー」
「……」
模試だって、あたしの受けたい高校は合格確率60%だった。
一応書いたヒロトたちが行く学校は……お察しな確率だった訳だけども。第一希望じゃないし。
「だからいいよね?」
「ダメ。もっとやらないと」
「何で」
「俺と一緒の高校に行く為に、ね」
「は?」
「俺が、なまえと一緒の高校に行きたいんだ」
なかなかに横暴なことをさらりと言ってのけたヒロトに、あたしはあっさりと白旗を上げた。
ほんと、飴と鞭の使い分けが上手い奴だ。
「……全く、ヒロトには敵わないな」
と言ってやれば、「ありがとう」とヒロトは優しく微笑んだ。
もうちょっと、頑張ってみようかな。
***
ヒロトさんに勉強教わりたい。