受験生!
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少年サッカーの世界大会である、フットボールフロンティアインターナショナル、通称FFI。
FFIで日本代表イナズマジャパンが優勝して、早くも1週間以上経過しようとしていた。
受験勉強の気分転換がてら、眠気覚ましのコーヒーを片手にテレビのチャンネルを回していれば、FFIのハイライト番組がやっていた。
ぼんやりとそれを見ていれば、独占インタビューだかなんだか、イナズマジャパンへのインタビューが始まった。
そこには、見覚えのある少年が1人。
「虎丸くん……」
近所の食堂、虎の屋の一人息子で、イナズマジャパン唯一の小学生メンバー。
彼のお母さんは体が弱く、受験生になる前は、私も乃々美ちゃんとよくお手伝いをしていた。
それだからか、虎丸くんは私になついてくれていて、姉のように慕ってくれている。
イナズマジャパンに選ばれた時は驚いたけど、大きくなったなあとしみじみ思う。なんせ、世界大会で優勝してしまったんだから。
「あんなに生意気だったのにね」
苦笑しながらチャンネルを回そうとすれば、パッと画面が切り替わって、虎丸くんが映った。どうやら次は彼のインタビューらしい。
どんなことを聞くのか気になって、慌ててリモコンから手を離し、椅子に座り直した。
――優勝おめでとうございます!
『ありがとうございます!』
――FFI優勝を果たした、ご感想は?
『とにかく嬉しいです。憧れの豪炎寺さんとサッカー出来ましたし!』
――尊敬しているんですね。
『はい!』
虎丸くんは本当に豪炎寺くんが好きだなあ。あ、豪炎寺くんを茶化す声が少し聞こえるや。
――では、今一番この気持ちを伝えたい人に一言どうぞ!
『そうですね……』
ちょっと考え込むような仕草をしてから、虎丸くんは口を開いた。
『母さんや乃々美姉ちゃんにも伝えたいけど、やっぱり――』
「(誰なのかな……)」
コーヒーカップを口元に持っていこうとした時、
『なまえ姉ちゃんです!』
「え!?」
飛び出してきたまさかの名前に、私は危うくカップを落としかけてしまった。というか、私って……。
『これ見てるか分かんないけど……俺、優勝したよ!約束、ちゃんと果たしたから!』
「約束……あ!」
……情けないな。私から言い出したことなのに、私が忘れてて虎丸くんが覚えてるなんて。
『今度はなまえ姉ちゃんの番だからね!』
画面の向こうでニッと笑った虎丸くんは、次の人にバトンタッチをした。
「……約束、果たさなきゃね」
虎丸くんはFFI優勝。私は高校入試合格。
絶対に受からないと。自分の為にも、虎丸くんの為にも。
私はコーヒーを飲み干すと、テレビを消して、机に向かった。
***
初めて虎丸書いた……。