荒波一期(仮)

□豪炎寺と駄弁る
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ある日の昼休み、



「豪炎寺ー」

「何だ」

「豪炎寺豪炎寺豪炎寺」

「……」

「ごーえんじー」

「……何がしたいんだお前は」

「豪炎寺の名前呼びたかったから」

「……はあ」



好きな女子に散々呼ばれ、理由を聞いてみれば呼びたかっただけだと言われる。天然か、と豪炎寺は思った。



「あたし音が5文字の名字とか初めて見たよ」

「まあ、そう頻繁に見かけるものではないだろうな」

「最初はなんて読むのかと思ったよ」

「国語の成績は」

「大丈夫!今のところ守兄とは違って4キープだから!」



そういえば円堂は国語の成績が悪いと聞いたな……と豪炎寺は思った。



「まあその、守兄はお察しくださいなんだけどね」

「だろうな」



そもそもあの本人にしか読めなさそう字だと、先生は解読するのに時間がかかりそうだ。

前に少しだけ見た円堂のノートを思い出しながら、豪炎寺は頷いた。



「豪炎寺は頭よくて苦手とかなさそう」

「俺にも苦手な教科くらいあるぞ」

「え、意外。豪炎寺って頭脳明晰とか眉目秀麗みたいな言葉が合うと思ってたのに」

「寧ろ俺は美波からそういう四字熟語が出たのに驚いたな」

「あたしだって四字熟語くらい使うよ!」

「眉目秀麗は学力には関係ないと思うが」

「あ。でも実際豪炎寺にはぴったりだと思うよ。格好いいし!」

「かっ……」

「ファンクラブとか出来るくらいだしね」

「……」

「豪炎寺?」

「ああ……なんでもない」



格好いい。何度かそう言われたことはあるが、改めて言われると何とも照れ臭い。それが好きな相手なら、尚更。

本人にその気がないのはわかっている。でも、嬉しいものは嬉しい。



「ファンクラブかあ。どう思う?」

「興味ないな」

「あっさり切った……。折角豪炎寺のことが好きで応援してくれてるのに」

「……まあ、応援してくれるのは嬉しいよ」

「だよね!」

「どうせなら好きなやつに……」

「えっ、豪炎寺って好きな人いるの?」



しまった、と豪炎寺は口を押さえた。ドキドキとしながら、美波を横目に見る。

それに対して美波は、そうなんだーとあっけらかんな受け答えであった。

年頃の女子なら、この手こ話は気になるものなんじゃないのか。



「ファンかあ……いいなあ……」



いやそこを気にしなくても。



「あ、そろそろ昼休み終わるじゃん。あたし教室に戻るね!」

「ああ」



複雑な気持ちでその後ろ姿を見送った豪炎寺に、不機嫌そうな円堂が歩み寄った。



「何話してたんだよ」

「大したことじゃない」

「そのわりにはやけに楽しそうに見えたぞ」

「気のせいだ」

「……そっか!」



チャイムが鳴り、わらわらとクラスメートたちが座っていく。円堂と豪炎寺も席につく。

放課後が楽しみだと思いながら、豪炎寺は教科書を開いた。





***
時系列は不明。地区予選後くらい?
駄弁らせようとしたら、始終クダグダになった。ファンクラブについてはゲームネタです。

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