荒波一期(仮)
□円堂美波のライセンス試験
1ページ/2ページ
「ここが日本サッカー協会……」
あたし、円堂美波は、部活を休んで日本サッカー協会本部に来ていた。
理由はライセンスを取って、フットボールフロンティアに出るためだ。
「……緊張してきた」
でも、せっかくなっちゃんが手続きをしてくれたんだ。
それに、絶対にライセンスを取って試合に出るって、さっくんと鬼道に約束したし、頑張らなきゃ!
軽く頬を叩いて、あたしは中に入った。
「ライセンスを取得するための試験を受けに来ました」
「では書類の提出をお願いします」
「あ、はい」
受け付けでなっちゃんから渡された書類を出すと、更衣室に通された。ここで着替えるらしい。
バッグからユニフォームを出して着替える。仕上げはハチマキで、しっかり締める。
「うっし」
なんか気持ちが引き締まった。
控え室から出て、案内表示を見ながら、奥のグラウンドに行く。
試験官っぽい人と、試験を受けに来たらしい女の子たちがいた。どの子も表情がなんか暗い。
「(落ちちゃったのかな)」
なっちゃん曰く、相応に難しいとか言ってたからなあ……。てかギャラリーも結構いる。
「試験お願いします!」
「試験は君で最後だ。合格の条件は、俺たちから10分以内に点を取ること」
10分の間に点を取られてしまったら、その時点で不合格。確かに厳しいな……。キーパーもいないわけだし、しかも1対11だ。
試験官さんは、協会の職員だそうだ。サッカー協会で働いてるだけあって、実力もそこそこだとか。
……個人的には、得意なプレイは人それぞれなんだから、点を入れられるか否かで見るのはどうかと思う。
気になったので聞いてみたら、実際の判断基準はそれだけじゃないらしい。でも、どうせなら、点を取ってやりたいとも思う。
あまり言いたくないけど、性別の時点であたしにはハンデがあるんだ。出来ることが多いに越したことはない。
グラウンドに立って、目の前を見据える。ボールはあたしからだ。
……大丈夫。守兄も一朗太も豪炎寺も、みんなが練習に付き合ってくれたんだ。
「勝つんだ!」
ピーッ
ホイッスルが鳴った。とにかく先手必勝、相手陣内に切り込む。
大柄な人が多いから、隙間を掻い潜って行けばなんとか……!
「甘いぜ」
「うあっ」
強いショルダーチャージをかけられた。女だとか子供だとか、そういうのがないプレイ。そうでなくっちゃ!
思いっきり地面を蹴って、走って、追いつく。そこからスライディングをして、なんとかボールをクリアする。
守兄みたいにゴールを守る守護神じゃない。一朗太みたいに足は速くない。豪炎寺や染岡みたいに強力なシュートは打てない。
けど、そんなみんなのことを、誰よりも近くで見てきたんだ。そして、一緒にフィールドを走りたいと、心の底から思う。
あたしにはまだまだなとこが沢山ある。悔しいけど、中学生になって男女の体格差っていうのが出てきてからは、なおさら。
でも、そんな言い訳はしない。してる暇があったら足を動かす。全力で、ぶつかるだけだ!
さーて、反撃開始!
.