荒波一期(仮)

□円堂美波のライセンス試験
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「ここが日本サッカー協会……」



あたし、円堂美波は、部活を休んで日本サッカー協会本部に来ていた。

理由はライセンスを取って、フットボールフロンティアに出るためだ。



「……緊張してきた」



でも、せっかくなっちゃんが手続きをしてくれたんだ。

それに、絶対にライセンスを取って試合に出るって、さっくんと鬼道に約束したし、頑張らなきゃ!

軽く頬を叩いて、あたしは中に入った。



「ライセンスを取得するための試験を受けに来ました」

「では書類の提出をお願いします」

「あ、はい」



受け付けでなっちゃんから渡された書類を出すと、更衣室に通された。ここで着替えるらしい。

バッグからユニフォームを出して着替える。仕上げはハチマキで、しっかり締める。



「うっし」



なんか気持ちが引き締まった。

控え室から出て、案内表示を見ながら、奥のグラウンドに行く。

試験官っぽい人と、試験を受けに来たらしい女の子たちがいた。どの子も表情がなんか暗い。



「(落ちちゃったのかな)」



なっちゃん曰く、相応に難しいとか言ってたからなあ……。てかギャラリーも結構いる。



「試験お願いします!」

「試験は君で最後だ。合格の条件は、俺たちから10分以内に点を取ること」



10分の間に点を取られてしまったら、その時点で不合格。確かに厳しいな……。キーパーもいないわけだし、しかも1対11だ。

試験官さんは、協会の職員だそうだ。サッカー協会で働いてるだけあって、実力もそこそこだとか。

……個人的には、得意なプレイは人それぞれなんだから、点を入れられるか否かで見るのはどうかと思う。

気になったので聞いてみたら、実際の判断基準はそれだけじゃないらしい。でも、どうせなら、点を取ってやりたいとも思う。

あまり言いたくないけど、性別の時点であたしにはハンデがあるんだ。出来ることが多いに越したことはない。




グラウンドに立って、目の前を見据える。ボールはあたしからだ。

……大丈夫。守兄も一朗太も豪炎寺も、みんなが練習に付き合ってくれたんだ。



「勝つんだ!」



ピーッ



ホイッスルが鳴った。とにかく先手必勝、相手陣内に切り込む。

大柄な人が多いから、隙間を掻い潜って行けばなんとか……!



「甘いぜ」

「うあっ」



強いショルダーチャージをかけられた。女だとか子供だとか、そういうのがないプレイ。そうでなくっちゃ!

思いっきり地面を蹴って、走って、追いつく。そこからスライディングをして、なんとかボールをクリアする。

守兄みたいにゴールを守る守護神じゃない。一朗太みたいに足は速くない。豪炎寺や染岡みたいに強力なシュートは打てない。

けど、そんなみんなのことを、誰よりも近くで見てきたんだ。そして、一緒にフィールドを走りたいと、心の底から思う。

あたしにはまだまだなとこが沢山ある。悔しいけど、中学生になって男女の体格差っていうのが出てきてからは、なおさら。

でも、そんな言い訳はしない。してる暇があったら足を動かす。全力で、ぶつかるだけだ!

さーて、反撃開始!





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