荒波一期(仮)

□紅い瞳
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部活にて。休憩でドリンクを飲んだあと、籠に返そうとベンチに向かおうとした時、地面の窪みに足を取られて転んだ。

手からすっぽ抜けたボトルは、前方にいた鬼道の顔面に直撃。蓋が緩んでいたのか、残っていた中身がぶちまけられた。



「あ」

「……」



や、やってしまったー!よりにもよって鬼道だなんて……。ゴーグルからポタポタと雫が垂れている。

……よく見えないけど、これは絶対睨んでる。絶対怒ってる。やばい、外周10周とか言われたらどうしよう。



「えーっと」

「……喧嘩を売っているのならば買おう」

「うわあああ違う!違うって!不可抗力だよ!」

「はあ……。言い訳より先に言うことがあるだろう」

「ごめんなさい!」

「はい、お兄ちゃん。ついでに顔洗ってきたら?」

「そうしよう」



春ちゃんからタオルを受け取って水道の方へ歩いていく鬼道。ごめん、本当にごめん。だから恨まないで。

……まてよ、顔洗うってことはゴーグル外すってことで、素顔見れるんじゃ……。



「……」



見てみたい。



「春ちゃん、あたしも顔洗ってくる」

「わかりました!」



タオルを受け取って早歩きで鬼道を追う。やっぱりゴーグルは外していた。当たり前か。



「鬼道ー」

「!」



弾かれたように顔を上げた鬼道とあたしの目が合う。

大きくて、綺麗な、赤い目。



「わ……」



思わず声を漏らせば、慌てたように顔を乱暴に拭いてゴーグルをつけてしまった。



「変なものを見せてしまったな」

「変なものって……そんなことないよ!凄い綺麗だった!」



思ったことを言っただけなのに、ため息をつかれた。



「なんかあたし悪いこと言った?」

「……普通男が綺麗だと言われて喜ぶか?」

「一朗太は髪綺麗だよねって言ったら喜んでたよ」

「それは例外だ」



例外なんだ……。男心とかよくわかんないや。



「でももっと見たかったな。綺麗だなって思ったのもあるけど、なんだかいつもと違う感じでさー」

「どういう意味だ」

「ほら、ゴーグルって鬼道のトレードマークだからさ」

「……そうか」



そっぽを向かれてしまった。怒ってるのかと思ったら、耳が赤いのが見えた。



「もしかして照れてる?」

「なっ……、そんなわけないだろう」

「顔赤いよ」

「目の錯覚だ」

「流石にそれはないと思う」



顔真っ赤だから説得力皆無で、理由が苦し紛れすぎるよ……。



「なんか鬼道って大人びてると思ってたけど、やっぱ同い年なんだね……」

「何を1人で自己完結しているんだ」

「うわ鬼道って実はエスパー?」

「そんなわけないだろう」

「だよねー。で、何でわかったの?」

「全部口から出ていた」

「……そんなマンガみたいなことがあってたまるかー!」

「はあ……」

「……」



よし、無意識に口から思ったことが出ないように気をつけることにしよう。

それにしても、鬼道ってわりと顔立ちが幼い感じなんだなあ。目も大きいし。

言ったら文句言われるだろうから絶対に言わないけど、かわいいと思った。



「あたし、赤好きだよ」

「は?」

「黄色とかオレンジとか水色とかも好きなんだけどさ、赤も好きなんだよね」

「随分欲張りなんだな」

「欲張りじゃないし!」



黄色はあたしのハチマキ、オレンジは守兄ぃのバンダナ、水色は一朗太の髪、赤は鬼道の目。



「みんな好きな色なんだよね」

「はあ……」

「何故またため息」

「お前らしいというか」

「変じゃないよ。あたし、鬼道の目好きだな」

「! …………戻る」

「はーい、って先に行かないでよ!」



既に歩き出した鬼道の隣までいって、たわいもない話をしながらグラウンドへ戻った。

あ、顔洗うの忘れてた。まあ、いいや。



戻った時、守兄と一朗太が鬼道のことを睨んでた気がするけど、見なかったことにしておこうと思う。






(なんかゴーグル外した鬼道かわいかったなー、あとかっこよかった)
(美波先輩そのことについて詳しく!)

((あいつが言っていたのは目の事だというのに……、くそっ))





***
ゴーグルオフさせたかったがために、鬼道さんにドリンクまみれになってもらいました。申し訳ない。
素顔の鬼道さんはかわいいですよね!

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