荒波一期(仮)

□染岡竜吾の苦労
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「はあ……」



俺、染岡竜吾は、最早見慣れてしまった光景を見てため息をついた。

何を見たかっていうと、円堂がうちのクラスの男子を笑顔で脅しているところだ。

確かそいつは円堂が文字通り溺愛している妹の美波が好きだった筈だから、その内こうなるとは予想してたけどよ……。

朝っぱらこんなのを見た俺の気分は急降下だった。何が悲しくてこんなん見なきゃなんねえんだ……。

慣れたといえば慣れたが、サッカーバカな円堂がこんなことをしているのには、未だに違和感を感じる。というか、怖い。



「よ、染岡」

「半田じゃねえか」

「何してんだ?こんなところで」

「……あれだ」

「ん?……あー、そういう」



円堂を見た半田もため息を吐いた。見慣れたとはいえ、やっぱな……。

最近は豪炎寺、転校してきた鬼道、他にも佐久間とか、サッカー関連で美波が好きなやつが増えたと思う。

だから、なんつーか、そのストレスからいつもより表情が怖い気がする。八つ当たりだな、ありゃ。

あの後フォローすんのは俺や半田なんだぞ……。いやシスコンになった理由は知ってるし、美波が大切なのは分かるけどよ……。

友達までなら許すっていっても、こんなことされた後じゃ近づきづらいだろ……。それが狙いなのかもしんねえけど。

そういえば、東なんか購買で胃薬買ってたな。何やってんだ円堂は。勉強にもその意欲向ければ、成績も上がるんじゃないか。



「相変わらずだよな」

「ああ」

「円堂と豪炎寺と鬼道が何て言われてるか知ってるか?」

「何だ?」

「シスコンブレイク組だってさ」

「……」

「あの3人の必殺技、イナズマブレイクから取った通り名ならしいぜ」

「……マジか」

「マジ」



何だよシスコンブレイクって。間違ってねーけど、周りのやつらからも重症認定か。

サッカー部の中心の3人がシスコンってどーよ。おかしいだろ。まあ、理由的にわからなくもないが、それでもちょっと、なあ……。

半田を見たら、遠い目をしていた。気持ちはわかる。クラス替えして今は違うが、1年の時は円堂と同じクラスだったからな。

そんで今は美波と同じクラス。そんなとこで中途半端じゃなくなっても、全然嬉しくないだろうな。



「あ、染岡じゃないか」

「え、円堂」

「こんなとこで何してんだ?」

「まあ、ちょっとな」

「なら、俺の話聞いてくれよ!」



キラキラとした笑顔を浮かべている円堂。やべえな、こりゃ。間違いなく愚痴られる。



「おい半……」



横を見たら、半田はもうそこにはいなかった。廊下の奥の方に、その背中が見える。

……逃げやがったなアイツ!生け贄にしやがって!



「でさ……」



口を開いた円堂を見て、俺は潔く諦めることにした。





***
多分半田は、自分の身に迫るであろうことを察知して逃げた。
初期メンバーのこの2人は苦労人ポジション。

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