短編(女体化)

□日和とわがまま
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日和先輩からの依頼と、私のプロデュース力向上を目的に一日Eveのプロデュースをすることになった。


「絶対に弱みを見せてはいけないし、こちらにとって不利益になる情報を与えてはいけないよ。それと、あちらに君を預けるのは今日一日限りだ。緊急事態でも起こらない限りね。明日には夢ノ咲学院に帰ってくるんだよ?絶対絶対に帰ってくるんだよ。わかったね?」


今朝、夢ノ咲学院に行って出席をとり玲明学院に向かう前、天祥院先輩にそう念を押され心配そうな顔で見送られた私は夢ノ咲学院を出ると同時に前からぎゅーと誰かに抱きしめられてそのまま車に押し込められた。

見送りで来てくれていたTricksterのみんなの「夢咲が拐われた〜!」という声と騒がしさに私は誘拐でもされてしまったんだろうかと不安になったけれど、すぐに抱きしめられた腕から解放されて私を車に拉致した犯人がわかった。


「待ちくたびれて迎えに来ちゃったんだよね!どう?驚いたよね?ね?」
「…日和先輩」
「その顔は驚いた顔だね!うん。ジュンちゃんには反対されたけど、夢咲ちゃんの驚いた顔が見たかったからやっぱりこれでよかったね!」
「…はぁ。もうこの際ツッコミませんけど、ジュンさんは何処ですか?」
「ジュンちゃん?さぁ、知らないね。私といるのに他の女の話なんかしないでほしいね!」


そう言ってそっぽを向いた先輩は今日も理不尽だ。

私は今日、Eveのプロデュースをさせてもらえるって聞いてたのに…とご機嫌ナナメになってしまった日和先輩の横顔を見て、ため息を吐いた。


「日和先輩」
「………」
「日和先輩ってば〜」
「………今は夢咲ちゃんと話したくないね!」
「……もう。いつもはマシンガントークのくせに。せめて何処に向かってるのかぐらい教えてくださいよ。今日何をするのかとか…」
「……ううん。教えてあげないね!」


頑なな先輩に私は諦めて、たぶん高級車であろうふわふわのシートを堪能しつつ、心配しているであろうTricksterのみんなに「心配しないでください。今、日和先輩といます」と連絡をした。

すっかり暇になった私は窓の外を眺めていると車が玲明学院の前を通り過ぎた。

通り過ぎる一瞬、校門前にジュンさんらしき人が驚いた顔でこちらを見ていた気がしたのだけど…。


「……日和先輩。学院通りすぎましたけど何処に行くんですか?」
「……知らないねっ!」
「 今、校門にジュンさんいた気がしたんですが…」
「っ!またジュンちゃんの話しをするなんてそんなにジュンのことが好きってことなんだね!」


キッとやっとこっちを向いた日和先輩は強く私を睨んだ。


「いえ、好きとかではなく…」
「なら私の方が好きって言ってよね!」
「……?言ったら、何処に行くか教えてくれるんですか?」
「うん。教えてあげるね!」
「じゃあ言います。日和先輩の方が好きですよ」
「……ふふっ。うんうん!言わせたのは自分だけど、やっぱり夢咲ちゃんに好きって言われるのは嬉しいね!だからこれから何処に行って何をするのか夢咲ちゃんに教えてあげるね!」


さっきまでのつーんとしてそっぽを向いていた先輩は何処へやら、楽しそうな顔で私の肩に寄りかかってきた日和先輩。

日和先輩の淡い緑のふわふわした髪が首にあたって擽ったい。

先輩は私より背が高いし、重いし邪魔ではあるけれど、「退いて下さい」なんて口にしたらきっとまた口を聞いてくれなくなるので黙っておく。


「これから行くのは私の家。ほんとはEveの仕事に付き添ってもらおうと思ったんだけど、イベントが延期になっちゃってオフになったから暇になったしね!それに、夢咲ちゃんと二人っきりになりたかったからね」
「……それみんなは知ってるんですか?」
「知らないね!それに、私がどうしようと私の勝手だし、許可は必要ないねっ!」
「……そうですか」


さっきから、ジュンさんから連絡がひっきりなしに来ているのは彼女もこの状況を理解していないし、説明すらされていないから私にコンタクトを取ろうとしているのだろう。

返事をしようと膝に置いていたスマホを手に取ろうとすると、その手を日和先輩に掴まれた。


「ジュンちゃんにはさっき私から連絡したから夢咲ちゃんは何も気にしなくて大丈夫だね!」
「いえ…。私からも一応連絡をしておきます」
「……そんなにジュンちゃんが好き?」


日和先輩がじっとこちらを見つめる。

私はまたか…と思いながらも口を開いた。


「いえ、日和先輩の方が好きですよ」
「っ〜〜〜!」
「…日和先輩?」


何故か先程のようにテンションを上げる訳ではなく、顔を真っ赤に染めた先輩が悶えはじめ、仕舞いには私にぎゅっと抱きついてきた。


「不意打ちはずるい…ずるすぎだね!」
「……はい?」


不意打ち、とは?


「もうそろそろ家に着くね。二人きりになったら思う存分イチャイチャしようねっ!」
「……イチャイチャ?」
「その為に夢咲ちゃんを連れてきたからね!」


初耳です。


「ふふっ。これは良い日和っ!」


ご機嫌な先輩に結局私は何も言えず、困り果てて頭を抱えた。

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