朔間凛月とプロデューサー

□彼女を愛し愛される事は難しい
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「なんか最近よく凛月と一緒にいるよな」


放課後。

怒った様子のくまくんに呼び出され彼が寝ているスタジオに向かわなきゃいけないと話しかけてきた真緒くんに言えば真緒くんは困った顔でそう言った。

そうかな?と聞けば真緒くんは「そうだよ」と小さい声で言った後、意を決したような表情で私を見つめた。


「真緒くん?」
「………っ」
「あの、私早く行かないと……」
「俺、花香のことが好きだ。だから、あんまり仕事以外で凛月のとこ行ってほしくない」
「………………」


真緒くんは真剣な顔で少し頬を赤くさせていて、私は一瞬戸惑った。

でも意味をしっかり理解してすぐに私はいつものように微笑んだ。


「うん。私も真緒くんが好きだよ」
「えっ、ホントか!?」
「当たり前だよ。でも、くまくんのことも好きだからくまくんにあんまり近づかないっていうのは無理かな…ごめんねっ!」


パチンと両手を合わせて謝れば真緒くんはポカンとした顔で私を見ていた。


「まぁ、くまくんは私のこと嫌ってるんだけどね」


なんだか気まずくて笑ってそう言えば真緒くんは困った様子で口を開いた。


「や、あの、花香、そうじゃなくてな?」
「?」


何か焦った様子の真緒くん。

そんな彼の頭に手を伸ばし撫でれば真緒くんは目をまん丸くして驚いた。


「ふふっ。いい子いい子。落ち着いて?」
「っ……あぁ、ごめん」


真っ赤な顔を隠すようにうつむいた真緒くんの頭をなんだかほんわかしながら撫でた。

その間ずっと真緒くんは黙って撫でさせてくれた。


「ねぇ」


そして、和やかな雰囲気はその一声で崩される。


「く、くまくん……」


不機嫌な顔でズカズカと教室に入ってきたくまくんは真緒くんの頭を撫でていたほうの私の手を掴むと私の腕を引っ張った。


「いっ」
「来て」
「おい、凛月。そんな乱暴に…」
「ま〜くんは黙ってて!」


むっとした顔で真緒くんにそう言ったくまくんは次の瞬間には真緒くんに向けていたのとは全然違う鋭く冷たい目を私に向けて言った。


「俺の呼び出し無視してま〜くん誑かしてるとかアンタほんとなんなの?」
「別に誑かしてなんかないよ!」
「ふ〜ん。じゃあ、今すぐ来れるよね?」


くまくんは苛立ったようにそう言って私の腕を引いた。

今度は何も言わず黙って着いていこうとすれば真緒くんにくまくんが掴んでいるのとは反対の腕を掴まれた。


「凛月、待て」
「……ま〜くん…?」


真緒くんに呼び止められて振り向いたくまくんは驚いた顔をした。

私も振り返って真緒くんを見れば珍しく真緒くんが怒った顔をしていて私も驚く。


「凛月はなんでいつも俺の邪魔するんだ?凛月は俺の気持ち知ってるくせに」
「っ……違うよ、ま〜くん。俺は別にま〜くんの邪魔がしたいわけじゃなくて俺はただ…ま〜くんのこと守りたくて……」


くまくんが焦ったように必死に真緒くんにそう言った。

けれど、口調は弱々しくて真緒くんに怒られたのがショックなように見えた。

黙り込んでしまった二人に挟まれた私は、どうにかしようと私は口を開いた。


「そんなふうに言い合えるなんて二人は本当に仲がいいね」


心から思ったことを口にしたら2人は「は?」と言いながら私に視線を向けた。

そんな二人に笑いかければ、真緒くんは言葉を詰まらせ、くまくんには睨まれた。


「私には真緒くんみたいに本音を言える相手も、くまくんみたいに思いやる相手もいないから……だから、羨ましい」
「……花香」


真緒くんが私の腕を掴んでいた手を解いて今度は私の手を握った。


「俺がいるよ。花香には俺がいる」
「真緒くん……」
「俺は花香にとってのそういう人になりたい」


真剣ででも優しい眼差しを私に向けてそう言った真緒くんに「ありがとう」と笑えば真緒くんは照れくさそうに笑った。


「寂しいやつ……」


ボソリとそう言ったくまくんは私の腕から手を離して教室を出ていこうとした。


「くまくん」
「…………」


凛月くんは私の呼び掛けに1回振り向いてくれたけれど、すぐに前を向いて教室から出ていった。

その時私を見たくまくんは哀れんだ表情をしているように見えた。


「花香」
「何?」


真緒くんに振り返って笑えば真緒くんは少しつらそうな顔をした。


「凛月のこと、気になるのか?」
「……うん」


結局、くまくんが私をスタジオに呼び出した用事はなんだったのだろうか。

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