ゆるゆる創作(2020.1〜
□「明日の約束」 (教師たちの秘密の放課後/神狩真一) 2020.3.28
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長い長いトンネルを抜けた先に、こんなに輝かしい花畑があると誰が想像しただろう。
悪名高いカス高との合併、偏差値65超えという途方もなく無理だと思われる目標を掲げ、進みだした清春高校。
今日、その目標を無事に達成した生徒たちが巣立っていった。
思えば、こんなに教師冥利に尽きる学年があっただろうか。
全てを諦めたような顔をしていた彼らが、あんなに満ち足りた笑顔で卒業式を迎えるとは。
そんな生徒の成長を間近で見ながら、自分も色々なことに気付かされ、信じるものが増え、そして大切なものを手にいれた。
「いい式でしたね…」
まさに今、自分が発しようとしていた言葉が、彼女の口から零れ落ちる。
「そうだな…」
生徒を指導する前に『教師の教養と知識から改革を』と随分酷い態度を取ったこともあったのに。
それでもこうして隣にいてくれる存在のありがたさ。
同じ目標に向かい、心を共にした同士。
それ以上の感情を俺に抱かせた、ただ一人の…
(恋愛解禁、か)
長いトンネルを抜けた先で、その言葉に今、一番喜びを感じているのは俺かもしれない。
まだ式の余韻に浸り、感動覚めやらぬ彼女の手を取った。
そして、いつかのように薬指に口付けを落とす。
前々から決めていた。
その指を飾るものを贈るのは、明日と――――
2020.3.28