ワンライ(スタマイ)のお部屋(2017.10.1〜
□お題:電話越し (宮瀬豪×泉玲) 2018-04-08
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「今日は、いいお天気ですね」
「はい。もう桜も満開で!庁舎近くの並木は、今が見ごろですよ」
「ふふ。さぞかし綺麗でしょうね」
いつもと変わらない、電話越しの優しい声。
花を愛する彼は、今、どんな光景を思い浮かべているのだろう。
「一緒に、見たかったです・・・」
「僕もですよ」
「じゃあ、今度一緒に見ましょうね。今年は、もう無理かもしれませんが」
「・・・そうですね。玲さんと一緒なら、蕾の桜も素敵に見えそうです」
「そちらは、桜は咲いていますか」
「どうでしょう。こっちに来てからは、花を見る機会も減ってしまったので」
あんなに花や植物が好きで。
たったひとりで、みごとな九条家のお庭を作り上げたひと。
今は、何処で何をしているんですか。
誰かと一緒なのですか。
いつ、帰ってくるのですか。
・・・帰ってきたら、また私と会ってくれますか。
聞きたいことは、山のようにあるのに。
文句だって、言いたい。
少し困ったような、あの表情も見たい。
だけど、電話越しじゃ。
何ひとつ、叶わなくて。
忘れようとして。
やっと、落ち着きかけたところだったのに。
また、こんな風に、電話をくれたりして。
「忘れさせても、くれないんですね」
とっくに切れた電話の、無機質な電子音に。
そう、ひとりごちてみた。
2018-04-08
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