ワンライのお部屋2(2017.4〜2018.3)

□ 無駄な抵抗  (大人の初恋はじめます/恵庭広樹) 2018.1.20
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誠と、結衣ちゃんが。

何となく、そんな気配はあった。というか、誠が結衣ちゃんを大切に思っているのは以前からわかっていた。

でも結衣ちゃんは。ずっと俺のことが好きで。
子どもの頃、俺の後ろに付いて離れなかったその姿は、可愛くもあり………鬱陶しくもあった。

一緒に仕事をする事になって、愛だの恋だのそんなものは、俺には邪魔な存在で。
何がなんでも成功させなくてはならないプロジェクト。そのために、俺は利用したのだ。

結衣ちゃんと、誠を。

それでも俺は、油断していたのかもしれない。あの子は、いつまでも俺を好きだと…
仕事の合間に、彼女を甘やかしながら。利用していながら、これもいいかと思えるくらいには…


誠が海外に行く。
結衣ちゃんには、告げないままに。
あからさまに動揺している彼女に向かっての、最終確認。

「それでも、俺が好きなんだ?」

わざと、意地悪く聞いてみる。
誠は、俺に君を託して行ったよ。自分の幸せはどこかに置き去りのまま。
君の、幸せだけを願って。

さあ、君はどうする?


相変わらず、下を向いてばかりなんだな。
決められないことじゃないだろう。

アイツが本気で俺に託す気なら。
君が、選べないというのなら。
俺が…決めてしまってもいいのなら…

「私が好きなのは…もうヒロくんじゃないよ…」

なんだ。
はっきり言えるようになったんだな…
真っ直ぐに俺を見返す瞳に、一瞬、心が奪われる。


そうだな。
君を守る役目は、誠に任せるよ。
結衣ちゃんを幸せにしろよ、と今度は俺が言う番かな。

これからは、俺が。離れた場所から見守っていくとしようか。
ようやく素直になった、2人のことを。





2018-01-25

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