ワンライのお部屋1(2016.4〜2017.3)

□ 直感 (真実の恋は甘い嘘から/七星朔夜) 2017.3.4
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「はっくしゅっ!」

くしゃみの音で目が覚める。部屋は…まだ薄暗い。

(ん……何時?)

時計を見ようと、体を起こそうとしたら。
隣には、愛しい彼の寝顔が。

(あ、肩、はだけてる)

そっと毛布をかけ直し、さっきのくしゃみは朔夜さんだったと気付く。

(昨日、あのまま寝ちゃったもんね…)

彼の私を呼ぶ声、吐息を思い出して、とたんに恥ずかしさが襲ってきた。

(わーわーわー、早朝から何なの私!落ち着こう、そしてもう一度眠ろう!)

そう思うのだけど…
起きている時はこんなに近くで顔を見ることなんかできないし。
それに、朔夜さんの腕は私を抱きしめるように回されていて。

動けない。
ならばいっそのこと、と、朔夜さんの顔を見つめる。

(ほんとキレイな顔。睫毛長いし。なんたって芸能人に間違われるくらいだもんね。
髪の毛もサラッサラだし、唇も薄いけど、形もよくて…)

この唇が、昨日、私を……

…ダメだ。口元を見ていると、ますます眠れない!
気がつくと、引き寄せられるように、頬に口づけてしまっていた。

(も、もう、私ってば!)

「寝込みを襲うんじゃねーよ……」

「えっ?お、起きてたんですか?」

「いま…起きた。まったく、人が寝てるのに…」

「お、おはようございます朔夜さん!」

恥ずかしさのあまり、そう言って彼に背を向けた。

「なんでそっち見てんの?」

「だって、恥ずかしいから…」

「あのな…恥ずかしいのはこっちだろ。寝てる間に…あんなことされて…」

ちら、と後ろを見ると、耳まで真っ赤にした朔夜さんの顔。

(う、わぁ…か、可愛い…!何、この可愛い生き物!)


「結衣、おはよ…」

そう言って、私を見つめる目は、この上なく優しい。
本当に愛おしいものを見るような。
そんな眼差しが、自分に注がれていると自覚し、照れてしまう。


「結衣、どうしたの。顔、真っ赤。」

「わかってます!……だから、言わないで…」

しばらく見つめられて。俯いていた私が顔をあげると。


「俺を選んでくれたのが、結衣で良かった。」

「どうしたんですか、急に。」

「何で、あの最初のとき、俺を選んだわけ?普通なら、類かキヨだろ…」

「うーん、何ででしょうね。いうなれば直感?
 ほら、私って心の眼がいいですからね。なんたって凄腕カメラマンだし。」

「ぷっ、自分で凄腕って言うか?」

「ま、まぁそこは流してくれても…」

「でも、結衣の直感のおかげ、か。」

どうして、と聞かれても、理由があったわけじゃない。
女嫌いだなんて知らなかったし、愛想も良くなかった最初の頃を思うと、今が信じられないのは確かだ。


過去のトラウマから、ずっと縛られていた苦い思い出から。
開放された朔夜さんを、これからも守りたい。

「何ニヤニヤして。」

「え、ニヤニヤ!? おかしいなぁ、微笑んだはずなんだけど…」

「ニヤけてた。……でも、可愛い。」


だーかーらーーー!!
そういう言葉を、サラッと言わないで!

「本当。結衣のことは、これからも俺が守るから。」

「あ、私も今、同じこと思ってました。」

「俺が結衣に惹かれたのも、直感、だったのかもな…」

「じゃあ、似たもの同士で。これからも、よろしくお願いします。」

「ん…」


ほっとしたような朔夜さんの顔を見て、私たちはまた、幸せな眠りに落ちていった。




2017-03-04

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