ワンライのお部屋1(2016.4〜2017.3)
□ 愛の言葉 ( 恋人は専属SP/早瀬響也) 2016.12.10
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クリスマス前のある日。
珍しく、響也くんは飲んで帰ってきた。
「響也くん、大丈夫?」
「これくらい平気です。」
どう見ても平気そうじゃないけど。
ゆるゆるとソファーに腰をおろした響也くんの隣に座る。
TVはクリスマス特集。
今年は、どうしよう。
忙しい響也くんだから、予定を立てるのはムリかな…。
少しだけ、寂しい気持ちになる。
「ねぇ、響也くん。クリスマスのプレゼント、何が欲しい?」
「…何も。」
「そう言わずに…。じゃあ、どこか行きたい所とかは?」
「特にない。そういうアンタは?」
だんだん目が眠たそうだ。
「もう、この酔っ払いさんめ。飲めないのに、つき合って無理して飲むから…」
「酔ってません。」
「ハイハイ、もう休んだ方がいいよ。」
「アンタは、何が欲しいんだ?」
「え…私?」
突然聞き返されて、んんん、と思う。
何だろう。今すぐには思い浮かばないけど…
「じゃあ、愛の言葉、とか。」
「あいのことば?」
「うん、そうそう。」
話を切り上げるために、そう言ってみた。
どうせ、明日には覚えていないだろうし。
「さ、早く休んで。」
*******
次の朝。
起きたらもう、響也くんはいなかった。
(今日は早番だったんだ。お酒、抜けたかな)
響也くんのことだ。
酔うのも早いが、覚めるのも早かったんだろう。
パンを食べていった跡がある。
(朝ごはん、用意してあげたかったな…)
その時、食卓に何かがあるのに気がついた。
(何?手紙…?)
そこには、
「アンタはいつも俺のこと、素っ気ないって言うけど
いつだって俺はアンタのことを想ってる
飲めない酒を飲んできても
心の中はアンタで一杯だ
とにかく二人で一緒にいられるなら
場所や物なんて、どうでもいいんだ 」
と、あった。
(こんな風に思ってくれてたの?ってか、飲めない酒を、って昨日のこと?)
もしかして、覚えてたんだろうか。
(だって、これって…)
アンタは
いつだって
のめない
こころの
とにかく
ばしょ
「!!!」
(もう、響也くんってば…。クリスマス前なのに、最高のプレゼントだよ…)
不器用な響也くんからの、不器用だけど私のためだけに書かれたメッセージ。
その威力は、普段の寂しさを一瞬で忘れさせてくれるくらい、十分すぎるものだった。
帰ったら、私も真っ先に伝えよう。
「ありがとう、響也くん!私も、響也くんのことだけ想ってるよ。」
2016-12-10