読み物

□オオカミの道理
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 とても天気のいい朝だ。
 太陽が眩しいせいで下を向きながら歩かなくちゃいけない。

「あら、今日も来てくれたのね」

 彼女は森で一人で暮らしているおばあさんだ。
 昼に彼女の元に来て話をするのは俺の日課だ。

「ああ、ばあさんよ、部屋の中は暑くないかい?メシはしっかり食ってるかい?喉は渇いてないかい?」

「ありがとう。あなたもそんなに心配しなくていいのに」

「心配するかどうかは俺が決めるよ、ばあさんも無理しないでくれよ」

「大丈夫よ。あなたも元気そうでよかった」

「こんなんでくたばってちゃいけないからな」

 俺はまだ若いからいいが、ばあさんは立つのもやっとなのにいつも一人で料理をして、掃除をして、ときどき送られる食料を食べて生きている。
 俺が来るようになってからは家事に手を貸しているが、彼女にはできるだけ自分でやろうとするクセがあるらしく、俺に手伝いをさせてくれない。

「今からお料理作るからイスに座っててちょうだい」

「俺に少しくらい手伝わせてくれよ」

「お客さんにそんなことさせられないわ」

「俺はあんたが心配で来てるんだ、俺はあんたに無理されると……そう、困るんだ」

「……困らせちゃ悪いわねえ」

 こういう会話をしてやっと手伝いをさせてくれる。
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