時を越えて

□4話
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過去へ行くというトランクスを見送るため、私は彼の家の前へと来ていた。
その時初めて知ったが、トランクスの母はあのブルマさんだった。
私が探していた人が自分の息子だとは思わないだろう。あの時分からないのも無理もなかった。
そして昼過ぎになり、「そろそろ時間だ」と、胸ポケットからカプセルを取り出すとそれを地面に投げた。
モクモクと立つ白い煙の中から、人一人分入れる程度の乗り物が出てきた。トランクス曰くこれがタイムマシンなのだという。
トランクスが乗り込む前、私は気がつくとトランクスの服の裾を握りしめていた。
「心配か?」
彼の言葉に私は首を振った。
もちろん心配じゃないと言えば嘘になる。しかし、それ以上にもっと純粋に、ただ素直に離れたくないという気持ちが勝っていた。
だが離れたくないと言えば、トランクスは困り果てるだろう。
せっかくこの日の為に努力してきたんだから、その気持ちを邪魔するような真似はしたくなかった。
「マリー?」
何も言わない私を気にしてか、トランクスは不安そうな声を出した。
思わずぱっと服から手を離す。
「大丈夫。心配しないで」
喉から出そうになる言葉をぐっと飲み込み、思ってもいないことを口から出した。
行かないでと言えば、どれだけ楽になるだろう。
しかしトランクスは私がそんな事を思っているとは知らないのか、発した言葉によってほっとしたようだった。
「すぐに帰ってくる」
ニコッと笑うトランクスの笑顔は優しくて、かっこよくて、泣きそうなほど愛おしかった。

彼は私の気持ちに気づいてるはずだった。
彼とは沢山思い出を作り、生きていてよかったと実感させられた。それは私だけはないはずだ。
だけどトランクスは私の気持ちに気づかないフリをしている。
余程の鈍感で気づかないのならば話は別だが、トランクスはそんな人じゃない。
「絶対帰ってきて。
私もトランクスにまだまだ話足りないこと、いっぱいあるんだから」
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