novel-abyss-


□それは陽だまりのようで
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きっかけは数日前、ミュウのこの発言だった。

「ご主人様はモテモテですの。」

「…は?」

突然何を言い出すんだ、このブタザルはと言わんばかりにルークは怪訝な表情をしていた。

「ミュウ、それはどういうことかしら?」

ガイならともかくルークが街で女性から声をかけられたことなど一度も見たことがない。
確かに顔は整っているのだが、いかんせんあの性格だ。
自分が見ていないところでルークが声をかけられていたとしてもモテモテとは言いがたいのでは?
そんな微妙にルークに失礼なことを考えながらティアはミュウに尋ねた。

「ご主人様は僕の仲間たちにモテモテなんですの!」

「「…は?」」

意味がわからない。
この場合、仲間とはパーティのメンバーのことではないだろう。
(確かにアニスは彼を好きだろうが、一人だけでモテモテとは言い難い。)
とするとチーグル族のことか。
そう思い尋ねてみるが彼女の予想もしない答えが返ってきた。

「ご主人様は僕たち魔物にモテモテなんですの!
僕はそんなご主人様に仕えられて鼻が高いんですの!」

「…はぁ?!なんで俺がっ?!」


ルークにしてみれば、彼らに優しくしてやった覚えもないし好かれるようなこともしていない。
懐かれる理由がまったくわからないのだ。

「僕たち魔物も優しい人は大好きですの。
ご主人様はライガさんの赤ちゃんのことを思ってくれたですの。
クイーンさんのライガさんたちも他の仲間たちもそれを感じているんですの。
だからみんなご主人様が大好きですのっ!!」

「…なっ!」

ルークは直球の好意が照れくさいのか真っ赤になってそっぽを向いてしまう。
たとえ魔物であろうと嫌われているよりは好かれている方が嬉しいものだ。

しかしティアには納得できなかった。
この世界で魔物とは出会えば倒すか逃げるかをして回避するもの。忌むべきものだ。
兄にも教官にもためらえば殺されると教えてられてきた。
実際、この旅でも何度も襲われている。
それなのに仲良くなるなどもってのほかの話。

「ありえないわ!
魔物たちが自分たちのテリトリーを侵されれば襲ってくるのは常識よ?」

「それは皆さんが僕たちのことを倒そうと思うからですの。
みんなもそれに反応して皆さんを襲ってしまうんですの。」

本当は仲良くしたいんですの、と悲しそうにミュウはうつむいてしまった。
ティアは大好きなミュウにそんな顔をさせてしまったことに焦ったがやはり16年培った『常識』が邪魔をして納得はできないのだ。
 
 
 
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