気が遠くなるほど長い夢を
□赤提灯と赤パーカー
1ページ/4ページ
この時の私はどーかしていた。
どーしようもなくむしゃくしゃしていた。
「ちび太、もう一杯」
どれくらいの時間、ここにいたのか…。
まだ明るかった空は濃紺に染まり、隣でワイワイ話していた酔っ払い達はもうすでにどこかへ行ってしまったようだ。
古風な赤提灯と、ハイブリットおでんという一風変わった看板がかけられているここは、私の行きつけの屋台である。
「飲みすぎだぜバーロー」
呆れ顔でビール、ではなく水を差し出すこのちびっこいのは屋台の店主のちび太である。
えぇー…まだ飲めるのに。
「いいのぉー。私ザルだから。いくら飲んれも酔わないのぉー」
「呂律が回ってねぇじゃねーか」
ごもっともだ。
私は普段お酒にめっぽう強い方なのだが、さすがに飲みすぎたみたいで、うまく喋ることができない。
そんな私を見かねてちび太は今すぐ帰るよう促す。
でも、今日は帰りたくなかった。
今日だけは1人になりたくなかった。
いやだ、帰れのやり取りが何回か続いたが、さすがにこの呑んだくれにもお手上げなのか、最後は勝手にしやがれ!とそっぽを向かれてしまった。
あーぁ。嫌われちゃったかなぁー。
へへっと心の中で乾いた笑みを浮かべた。