みじかいのん

□パジャマとオオカミ カミカゼ編
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「じゃあ、挨拶回りいこうか?」



「はい」



今日は先輩と挨拶回り。気持ちを切り替えたいところだが、街はどしゃ降り。なんだか私の心も雲行きがあやしい。






私とボイさんは付き合って1年ちょい。


ポンコツ…だけど大好き。



付き合っていくうちに好きがどんどん膨れ上がってしまうぐらい…好き。



本当に好き。


でも…


1つだけ不満がある。


それは…それは……






ボイさんとエッチしたのは4回ほどしかない。




最初は大切にしてくれてんのかなー。


ぐらいに思ってた。


でも、いっっっつも


いーーーっっっつも




泥酔。



彼は私の家にくるときは泥酔しているのだ。


スタッフがスタジオのセットのように担いでくるのがいつものパターン。


誰かこの世からお酒をなくして。



もちろん。私も努力してなかったわけでもない。


かわいい下着やルームウエアを着てた。


最終的にはセクシーな下着にも手をだした。


どれだけ金をかけたことか!!!!



でも。




「すいませーん。また飲み過ぎちゃって〜」


「あー…いえいえ。ブーマンさんいつもご苦労さま」


「どこに置きましょうか」


「あー。ソファーでいいですよ」


「ベッドじゃなくて?」


「お酒臭いから眠れなくて」


「なるほど。じゃあ、おじゃまします」


ブーマンは手慣れたようすで部屋に上がり、肩に担いでいたボイさんをドサッと荷物のようにソファーにおいた。



おいおい。人の彼氏をもっと丁寧に扱えよ。


「カミカゼさーん!!明日は10時に迎えにきますからーーー!!!!」


ブーマンはボイさんの耳元で大声をだした。

ボイさんは眉間にシワをよせ、「わかった、わかった」といわんばかりに手をあげた。


もう、このやりとりが介護士とおじいちゃんに見えてしかたがない。


で、私はボイさんに毛布をかけて、ベッドルームへ戻る。


お決まりのパターン。いつものパターン。…昨日の出来事?みたいな?





ハァ。






こんな気分の時に、ショッピングモールのテナントの挨拶回りとは…


みんなこれでもかという流行りのファッションを身に付け、楽しそうにしている。


グレーのスーツの私は完全に浮いてしまっている。






…気がする。





「…次はここだ」



ハッ!やばい。


先輩の話全然聞いてなかったよ…いかんいかん。


次は、この前のリニューアルオープンの時に入ったお店。


オーガニックコットン専門店だそうだ。



一通り店長さんと挨拶して、先輩は店長さんと話し込んでしまった。


地元の同級生らしい。


かわいい感じの女の店長さんと話している先輩はちょっといい感じ。


もう。付き合っちゃいなさいよ。


「ちょっと、出てきてもいいか?」


もう一人の店員さんの休憩が終わるので2人で食事にいってくるんだそうな。


そのまま押し倒しちゃえよ。


「いいですよ。」


「ごめんなさいね」

店長さんは笑顔も素敵で、羨ましくさえ思った。

「いえ。」

私は店長さんが眩しくて、ついついそっけない態度をとり、商品に目をやった。


私は商品を一つ一つ手に取ってみる。


休憩からもどってきた店員さんに店長が伝言している。


どこかで聞いたことのある声。


「あれ?…タナカさんの彼女?」


「あら!」


「知り合い?じゃあ、問題ないわね。あとよろしくね」


知り合いもなにもーーーーー!!!!


うちの人のボスの女ですぅううう!!!


はあああああ!!!なんだか久しぶりに身内にあった気分!!!


って、あれ?なんでここの店員さんなの?


「あれ…なんでここに?」


「辞めたのよ。今までの仕事は嫌じゃなかったんだけどね。どうせならやりたいと思ったことやっていこうかなって。」


「へー。タナカさんの影響ですね?」


「ふふふ。そうかも」


前に会ったときより、おだやかで幸せそうだ。


「ボイさんとは?」


「あー、ぼちぼちです。でも、いっつも酔っぱらってて」


「そっか」


「商品、手触りいいですね」


「でしょ。いつも、仕事で肩に力入ってるから、身に付けるものくらい優しいものもいいんじゃないですか?お客さ〜ん?」


「おっと。売りつけられる!!」


「肩の力抜いて穏やかにする時間を大切にするって大事よ?」


そっか…そうだよな。


肩の力入りすぎてスケスケの下着つけたって、現状はかわらないし。


もっと気楽に考えよ…ってことか。


「じゃあ、オススメください!」


私はオススメされたシャツワンピのパジャマを買った。
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