みじかいのん
□黒×青
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「ん?ちょっとまって…ブルーイッシュブラックパール…てなに?」
「黒ですね」
「え?青じゃないんですか?」
「はい。えっと、ご主人がこの色がいいとおっしゃったのですが…奥さま、グレードはこれで間違いないですよね?」
「ん?」
一番いいやつじゃんか!!これじゃ、車で寝泊まりするレベルだから!!!
私は思いっきりタナカさんの方へ向いた。
「チッ…ばれたか」
こんの!!!右舌オオカミめ!!!
ここはとあるディーラー。私は今まで乗っていた真っ赤な小型自動車をやめて流行りの軽自動車に乗りかえようとしている。
そう、○スラーに。
で、このオオカミは私のしらない間に営業マンに黒で見積書を作らせている。
「すいません。青も一緒につくってもらっていいですか?あと、グレードは一番下のやつで」
「もちろん。どちらもグレードは下げられるんですね」
「はい」
「じゃ、ちょっとお時間いただきます。」
営業マンは席をたった。
「なんで黒でなのよ!しかもグレード一番いいし!」
「黒が一番いいじゃねーか!!」
ショールームには誰もいない。ヒソヒソと言い争う。
「私は黒・白・シルバーはいやなの!」
「なんで?」
「だって、めずらしい色は駐車場すぐ見つかるから楽なんだもん」
「それだけじゃねーか!!」
「あ、あと洗車とかしないから」
「きっぱり洗車しないって言うなよ」
「あと、パールとかメタリック嫌なんだって!ソリッドがいいの!」
「なんだよそれ、今までが真っ赤なソリッドだからいいじゃねーか」
「じゃあ、オレンジ」
「それはマジで却下」
「な!!!」
私がお金出すのに決定権はなぜトーキョータナカにあるの?!
「お待たせしましたぁ〜」
営業マンが持ってきた見積書はほぼほぼ値段が変わらないますますケンカの種になるようなものだった。
どっちのよさも説明してもらい、試乗もした。試乗車は黒でショールームに写った私と試乗車はやっぱり似合わないと思ったけど、タナカさんは満足げだった。
やっぱ青がいいよ〜
「黒、似合ってたじゃねーか」
「そうかなぁ…」
黒かぁ…黒なぁ…
タナカさんの大きなSUVはタナカさんのものだし、別に気にならないけど…
どうしよ。
結局、数日悩んでしまった…
「タナカさん…」
ラーメン雑誌を読んでいるタナカさんに声をかける。
「ん?どした?」
「車の色ね…私がお金出すんだし…自分の好きな色にする…」
「あ、ああ。悪りぃ俺も口だしすぎた。お前の好きな色にしたらいいよ」
タナカさんはぽんぽんと優しく頭を叩く。
タナカさん…(キュン)
え、あ、ちょっとまって、そもそもこいつが黒っていいだしたんじゃね?
あーさっきのキュンは取り消し取り消し!!
その後、私は青色で契約し納車も済ませ、快適カーライフなんぞを送っている。
買い物から帰りタナカさんの大きなSUVのとなりに駐車する。
似たような形のの車が並び、タナカさんの車のせいでますます私の車はこじんまりしてみえた。
そこにリブちゃんが通りかかる。
「あら、リブちゃん。ひさしぶり」
「おひさしぶりニクー。あいかわらずブスニクー」
「リブちゃんも、あいかわらずブスよー」
リブちゃんは心置きなく本音でしゃべるので一周回って結構好きだ。
ブスが挨拶がわりだもんな。
「車、乗り換えたニクね。なんで黒にしなかったニク?」
「え、だって黒あんまりすきじゃないし」
「黒だったらタナパイとお揃いみたいになるのに」
「え?」
私はリブちゃんにそういわれると自分達の車を見た。
「あ」
あのオオカミが黒にこだわってた理由はこれか!!!
その日の夜、
「今日ね、駐車場でひさしぶりにリブちゃんに会ってね」
タナカさんはベッドに寝転んでタブレットにいれてるパズルアプリで遊んでいる。
「ふーん」
ゲームに夢中で心ここにあらずって感じ。
おかまいなく話を続けた。
「黒にしたらタナカさんとお揃いになるねっていわれた」
「…」
ゲームする手が止まる。
「もし、先にお揃いにするから黒にしようっていったら黒にした?」
「しない」
「チッ…頑固なやつめ」
「ふふん」